キャパシティ無限大のロードポートを持つシステムがM/M/1とみなされない訳

専用バッファと共用バッファの組合せ」の最後に書いた

  • M/M/mの待ち行列でLPを無限にしても、M/M/1がm個あるのとは違うのではないか?

という私の疑問の理由を以下に書きます。
もし、m個のM/M/1があるならば、各々の装置へのロットの到着はMに従うことになります。例えば、下図のように

ある装置は空いているのに別の装置では複数の待ちロットがある場合を考えます。次に、このシステムに新しいロットが到着したとしても、それぞれの装置について独立にロットが到着しているのですから、必ずしも空いている装置のところにロットが到着するとは限りません。
一方、M/M/mではあるが、各装置がLP−1個の専用のバッファを持つ場合は、もし、空いている装置があって、他の装置が皆、待ちロットを持っているのであれば、そのロットは空いている装置に割り付けられるべきでしょう(実際の工場の運用を考えれば)。
ここで私たちはステーションに複数台の装置が存在する場合に特有な問題である、

  • 「複数の専用バッファに空きがある状態で、ステーションに到着したロットはどのように装置を選ぶか?」

という問題に直面します。今後の考察の前提としてこれを合理的に定めなければ、これより先に考察を進めることが出来ません。
専用バッファに空きがある状態で、ステーションにロットが到着した際にどの装置に割り当てるかについては様々なバリエーションが考えられることと思いますが、ここでは簡単でかつ実用的なルールを定めたい、と思います。それは以下のようなものです。
(1)到着したロットを、ステーションにある専用バッファ内で最も待ちロット数の少ないバッファに対応する装置に割り当てる。
(2)もし、最も待ちロット数の少ない装置が複数台存在する場合は、最新の処理終了時刻が最も古い装置を選択する。

  • もちろん、各装置毎に、待ちロットの全てが処理終了になる時刻を推定して、それが最も早く起きる装置に割り当てるなど、多くの情報を活用すればより高度なロット割当ルールを作成することが出来るでしょが、ここでは比較的簡単でかつ実用的なルールである上記を採用することにします。

このようにルールを制定すると、上に述べたような、もし空いている装置が存在して、その他の装置が皆、待ちロットを持っている状態で、新しいロットが到着したとすれば、間違いなくそのロットは空いている装置に割り付けられるでしょう。ということは、LPの数がいくら大きくなっても、各装置の専用バッファに到着するロットの到着間隔分布はM(指数分布)にはならない、ということになります。空いている装置にロットを割り付ける方が、無作為にロットを装置に割り付けるよりも、同じ装置利用率で、より少ないサイクルタイムを達成するでしょうから、LPの数が大きくなっても、サイクルタイムはM/M/1で計算したよりも少なくなると推定出来ます。
一方、LPが1より大きい場合は、サイクルタイムは当然M/M/mで計算したよりも大きいですから、LPが2以上の時のサイクルタイムはM/M/mで計算した結果とM/M/1で計算した結果の中間に位置する、と推定出来ます。

話題の継続

「トラップされている」ということ」に続きます。