TUとTLとCET

2種類のディスパッチング」で述べたいずれかのディスパッチングでロットがロードポートに割り当てられると、搬送システムはそのロットを割り当てられたロードポートまで運びます。その時に時間がかかります。この時間をロード時間と呼ぶことにし、TLで表すことにします。また、処理や測定が終わったロットも搬送システムで次の工程に対応するストッカに運ばれますが、搬送の要求があってから、実際にロットがロードポートから取り外されるまでの間にも時間がかかります。これをアンロード時間と呼ぶことにし、TUで表すことにします。搬送の要求があるのは処理や測定が終わった時である、と仮定します。
一方、ロード動作が始まる時点についてはいくつか考えることが出来ます。
一番基本的なのは、

というシナリオです。この場合は、ロットが装置に割り当てられるのは、ロードポートが空いた時点、ということになります。
ところで、あるロードポートで処理済みのFOUPが新しいFOUPに交換されるまでの時間をキャリア交換時間(Carrier Exhange Time)と呼び、CETで表すことにします。すると、ロットが装置に割り当てられるのがロードポートが空いた時点であるような場合は、一連の動作は、下の図のようになります。

この場合、図から明らかなようにCET=TU+TLになります。
しかし、もしつねにTL>TUであることが分かっているのであれば、

  • (ケース2)処理が完了した時点でディスパッチングを起動し、ストッカ内のロットを割り当てる

ことも可能です。そのほうがCETが短くなります。この場合、一連の動作は、下の図のようになります。

この場合、CET=TLになります。
一般には、TUTLは確率的に変動する変数なのでTL>TUが成り立つかどうかは定かではありません。それゆえ(ケース1)のほうが一般的です。
キャリア交換時間CETは、のちに紹介するロードポートネックで重要な役割をはたします。

  • これから、搬送時間とロードポートを考慮した場合の待ち行列の振る舞いを調べようとしているわけですが、キャリア交換時間CETに注目することにより、上記のケース1、ケース2のどちらにも当てはまる法則を導き出すことが出来ます。