卑弥呼誕生

私の好きな遠山美都男氏、の本ですが、この本の論旨には私はあまり納得できていません。
私の理解ですと、この本の論旨はこういうことです。
まず、卑弥呼邪馬台国の女王か? と問いかけます。あたりまえのことを、と誰でも思いますが、魏志倭人伝には、卑弥呼は「倭国」の女王とは書かれてあっても、邪馬台国の女王とは書かれていない、とのことです。そしてこの「倭国」というのは「邪馬台国」などの複数の国が合わさって出来た連合体のことであって、それは邪馬台国そのものとは異なる、ということです。(この辺、私の頭は???になります。)
それから「女王」というのは当時の中国人の誤解であって、卑弥呼は「ヒミコ」という役職名である、ということです。卑弥呼は個人名ではない、ということです。(この点は納得できます。) 
ではヒミコはどういう役割を担っていたか? それは邪馬台国王(卑弥呼の男弟を邪馬台国王とみる)が倭国王の地位にあることを宗教的に補強する役割である、としています。卑弥呼という役職は倭国大乱後という時期に新たに必要にせまられて作られたものである、とのことです。しかし、卑弥呼という役職は、倭国王のもとに結集した首長たち全体の地位と権力の継承を保障出来なかったので、「古墳」というものを首長たちは発明し、これによって卑弥呼という役職は不必要になり消滅したのだろう、と著者は推定しています。(ここも、私にはどうもしっくりしません。)
それはともかく、この本で著者は松木武彦氏の研究成果を援用して、古代日本が徐々に統一される様を描いており、興味深い本です。