「般若心経」を読む

「般若心経」を読む (1981年) (講談社現代新書)

「般若心経」を読む (1981年) (講談社現代新書)

この本の裏書を見ると昭和59年(1984年)発行になっています。社会に出ていろいろ悩んでいた頃だと思います。今から思えばたいしたことを悩んでいたわけではないのですが。
この本は最初に玄奘三蔵の話が出てきます。
それから数学者の岡潔氏が登場します。
南禅寺の柴山全慶老師が雷がとどろくように講演をしています。
住職でありながらプロティノスを研究している空外先生という哲学者が登場します。・・・・
ここ数年は読んでいなかった本ですが、今回パラパラと読み直してみると、記憶に残っている話が随所に出てきます。この本を読み始めた頃と今とでは自分のこころのあり方が違うのを感じました。今はどちらかというと、やはり純真さに欠けているようです。
下は玄奘三蔵の話で印象に残っている箇所です。

 そこから先は、古くから「沙河(しゃが)」といった砂漠である。空に飛ぶ鳥なく、地に走獣なく水草もない。(中略)
 この時玄奘は目指す野馬泉を見つけられなかった。水を飲もうとして皮袋を落とし、水は一滴もなくなった。さすがの玄奘も参ってしまい、第四烽へ帰ろうとして十余里も来た時、自ら思った。「私は先に発願し、天竺に至らずんば一歩も東帰せずと誓った。なんで東に行くのか。東に向かって生きるよりむしろ西に向かって死のう」と。