ロードポートネックによるキャパシティ悪化の近似式

  • 図1

上の図のような確率分布を持つキャリア交換時間CETを持つ搬送装置と装置からなる系において、装置のキャパシティの悪化の度合いを近似的に見積る方法について述べます。ただし、私はまだこの方法をロードポートが2個の場合にしか導いておりません。以下ではロードポート数が2の場合に限るとします。

また、装置処理時間t_eは一定であるとします。また、装置がロットを要求する時には必ずストッカにロットは存在するものとします。つまり、ロット待ちによる装置の空きはないものとします。
このような条件の下では、CET{\ge}t_eであった場合は、もう1つのロードポートのロットが処理されている間にキャリア交換が完了するので、装置が空く事はありません。一方、それがいくら短くても別のキャリア交換がCET>t_eであったことの埋め合わせをすることは出来ません。よって、装置のキャパシティの悪化に寄与するのはCETの分布のうち、CET>t_eの部分だけであることが分かります。

  • 図2

よって、その部分(上図の例では赤く塗った部分)の分布だけが考察の対象になります。
このような分布の特殊な場合として、CET=t_e+Dの時だけ確率がPでそれ以外の場合は確率がゼロという場合を考えます。(この時CET=t_e+Dの時の確率密度は無限大になります。無限大ですので、分布のグラフはうまく書くことが出来ません。無理に書くと下図のようになります。)

  • 図3

すると、この時の(搬送と装置を組み合わせた)キャパシティCapaは、「CETが確率的に2値をとる場合のロードポートネック(1)」「CETが確率的に2値をとる場合のロードポートネック(2)」で述べたのと同じ考察を用いて

  • Capa=\frac{t_e}{t_e+\frac{P}{1+P}D}・・・・・・(1)

となることが分かります。この特殊な分布の場合の結果を、上の図のようなDが連続的な分布に拡張するには、CET=tの時の確率密度p(t)を導入し、DD=CET-t_eであるのでCET=D+t_eになることに注意すれば、

  • PD
    • \int_0^{\infty}tp(t+t_e)dt

  • 1+P
    • 1+\Bigint_0^{\infty}p(t+t_e)dt

に置き換えればよさそうです。つまり(1)を拡張した結果は次のようになります。

  • Capa=\frac{t_e}{t_e+\Bigint_0^{\infty}tp(t+t_e)dt\left{\frac{1}{1+\Bigint_0^{\infty}p(t+t_e)dt}\right}}・・・・・・(2)

さて、この近似式がどの程度正しいのか知りたいですが、そのためにはシミュレーションした結果と比較する必要があります。しかし、私はそのようなシミュレータを持っていません。
どうしたら式(2)の正当性を確認出来るのでしょうか?  これについては「ロードポートネックのシミュレーション」で検討します。