M/M/mにおける待ち時間の式の導出(3)

これは「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」の続きです。
M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)では、定常状態での各状態kの確率p_kが求まりました。ここから、待ち行列に並んでいるロットの数の平均、すなわち行列の長さの平均を求めることが出来ます。待ち行列に1個ロットが並んでいる状態はすなわち、m台の装置が皆ロットを処理していて、さらに待ち行列に1個ロットが並んでいる状態ですからその確率はp_{m+1}になります。同様に考えて、待ち行列k個ロットが並んでいる状態の発生確率はp_{k+m}になります。よって、行列の平均の長さL_q

  • L_q=\Bigsum_{k=1}^{\infty}(kp_{k+m})・・・・・・(15)

で与えられることになります。式(15)に式(12)を代入して

  • L_q=\Bigsum_{k=1}^{\infty}\left\{k\frac{(mu)^m}{m!}u^kp_0\right\}=\frac{(mu)^m}{m!}p_0\Bigsum_{k=1}^{\infty}(ku^k)
  • L_q=\frac{(mu)^m}{m!}p_0\Bigsum_{k=1}^{\infty}(ku^k)・・・・・・(16)

ここで

  • S=\Bigsum_{k=1}^{\infty}(ku^k)・・・・・・(17)

とおくと

  • uS=\Bigsum_{k=1}^{\infty}(ku^{k+1})=\Bigsum_{k=2}^{\infty}\{(k-1)u^{k}\}・・・・・・(18)

よって式(17)の両辺から式(18)の両辺を引くと

  • (1-u)S=\Bigsum_{k=1}^{\infty}(ku^k)-\Bigsum_{k=2}^{\infty}\{(k-1)u^{k}\}=\Bigsum_{k=2}^{\infty}\{ku^k-(k-1)u^k\}+u
  • =\Bigsum_{k=2}^{\infty}u^k+u=\Bigsum_{k=1}^{\infty}u^k=\frac{u}{1-u}

よって

  • S=\frac{u}{(1-u)^2}

これを式(16)に代入して

  • L_q=\frac{(mu)^m}{m!}p_0\frac{u}{(1-u)^2}=\frac{m^mu^{m+1}}{m!(1-u)^2}p_0

よって

  • L_q=\frac{m^mu^{m+1}}{m!(1-u)^2}p_0・・・・・・(19)

これで行列の平均の長さが求まりました。
次に平均待ち時間CT_qを求めるために、リトルの法則

を利用します。(平均WIP)にあたるのがL_qです。求めたいのは平均待ち時間CT_qですが、これは(平均サイクルタイム)にあたります。(平均スループット)にあたるのは、M/M/mにおける待ち時間の式の導出(1)での議論

さらに、ロットの到着間隔は装置の利用率uと反比例しますから

  • \frac{t_e}{mu}

となります。

を思い出し、(平均スループット)は到着間隔の逆数であることを考慮すれば、

  • \frac{mu}{t_e}

となります。リトルの法則から

  • L_q=CT_q{\times}\frac{mu}{t_e}

となりますので、

  • CT_q=\frac{L_qt_e}{mu}

ここに式(19)を代入すれば、

  • CT_q=\frac{m^{m-1}u^m}{m!(1-u)^2}p_0t_e・・・・・・(20)
    • ただし
    • p_0=\frac{1}{\Bigsum_{k=0}^{m-1}\frac{(mu)^k}{k!}+\frac{(mu)^m}{m!(1-u)}}・・・・・・(14)

これでM/M/m待ち行列の待ち時間の式を導出することが出来ました。