M/G/1における待ち時間の式の導出(2)

M/G/1における待ち時間の式の導出(1)」の続きです。前回から持ち越された課題は装置の処理の残り時間の平均値t_rを求めることでした。処理時間はG、すなわち一般分布の確率変数です。これがある時t_{e1}だったとしましょう。そうすると、この処理時間を使い切るまでの残り時間の変化は図のようになります。

この図からこの時の平均残り時間は

  • \frac{t_{e1}}{2}

であることが分かります。次の処理時間がt_{e2}であったとします。するとその平均残り時間は

  • \frac{t_{e2}}{2}

になります。図ではたまたまt_{e1}>t_{e2}であったとしています。では、この2つをまとめて残り時間の平均を考えると、それは

  • \frac{\frac{t_{e1}}{2}+\frac{t_{e2}}{2}}{2}

となるでしょうか? しかし、t_{e1}(図1)とt_{e2}(図2)では平均を取っている時間が違います。平均を取る時間を考慮して、両者を含めた残り時間の平均を求めると(つまり時間の重み付けをして平均すると)、以下のようになります。

  • \frac{\frac{t_{e1}}{2}{\times}t_{e1}+\frac{t_{e2}}{2}{\times}t_{e2}}{t_{e1}+t_{e2}}=\frac{t_{e1}^2+t_{e2}^2}{2(t_{e1}+t_{e2})}

次に、3つの処理時間の実現値を得た場合について同様に考えれば、残り時間の平均は

  • \frac{t_{e1}^2+t_{e2}^2+t_{e3}^2}{2(t_{e1}+t_{e2}+t_{e3})}

よって、これを拡張して考えれは、残り時間の待ち時間の平均値t_rは、処理時間の確率変数をT_eとすると

  • t_r=\frac{E(T_e^2)}{2E(T_e)}・・・・・・(3)

であることが分かります。ここにE(T_e^2)は処理時間の2乗の平均を、E(T_e)は処理時間の平均を表します。また\sigma_eを処理時間の標準偏差とすると、

  • \sigma_e^2=E(T_e^2)-\{E(T_e)\}^2

なので

  • E(T_e^2)=\sigma_e^2+\{E(T_e)\}^2

これを式(3)に代入して

  • t_r=\frac{\sigma_e^2+\{E(T_e)\}^2}{2E(T_e)}

ここでE(T_e)=t_eなので

  • t_r=\frac{\sigma_e^2+t_e^2}{2t_e}=\frac{\sigma_e^2+t_e^2}{2t_e^2}t_e=\frac{\left(\frac{\sigma_e}{t_e^2}\right)^2+1}{2}t_e=\frac{c_e^2+1}{2}t_e

これを式(2)に代入すると

  • CT_q=\frac{u\frac{c_e^2+1}{2}t_e}{1-u}

よって

  • CT_q=\left(\frac{1+c_e^2}{2}\right)\frac{u}{1-u}t_e

これでM/G/1待ち行列の待ち時間の式を導出することが出来ました。