工場統計力学(建設中!)

昨年の1月1日にブログのタイトルを「ファブ内物流の論理を求めて」に変えましたが、今年も今日からブログのタイトルを「工場統計力学(建設中!)」に変えます。
工場統計力学とは、複雑な工場の動作のメカニズムを、確率的な理論を適用することで解明しようとするものであり、そして工場の生産性向上の施策の発見に、そのメカニズムを役立てることを目指します。物理学の一分野である統計力学が、温度や圧力といった巨視的な量を分子のエネルギーや運動量という微視的な量で説明するように、工場のサイクルタイムスループットWIPリードタイムと顧客サービスレベルといった量を工場を構成する個々の装置を特徴付ける処理時間、処理時間の確率分布、MTBF(Mean Time Between Failures)やMTTR(Mean Time To Repair)、セットアップ時間、セットアップ頻度といった量から説明し、これらのいろいろな量の間の関係を明確にすることを目指します。
工場統計力学の大まかな見通しとしては、以下を考えています。

  1. 各工程での材料の流れ(スループット)と装置処理時間の平均値にかかわる諸関係を線形計画法で把握し、一部、ボトルネック・ステーションへの材料の流れの変動に対処する方法としてゴールドラットTOC(Thenory Of Constraint=制約理論)を用います。
  2. 材料の流れと装置処理時間の変動にかかわる動作の分析のために待ち行列理論およびその発展形である待ち行列ネットワークを使用します。

とはいえ、以上は全てこれから建設しようとしている体系(?)の話です。この1年でこの目標に向けてどこまで進めるか、やるだけやってみよう、そして来年の1月1日にはどこまで進んだかを振り返ってみよう、(そしてうまく進んだのであれば次のステップに進もう)と思っています。

  • なお、私は半導体業界に属している関係上、工場として主に想定しているのは半導体ウェハプロセスライン、つまり「ファブ」ラインを想定しています。そこでは、1製品を製造するためのプロセス・フロー(より一般的な言葉で言えば「ラウティング」)を構成する工程数が700程度あり、装置の種類が100程度、同じ装置を繰り返し何度も通過します。つまりロットが工場の中を流れる仕方は非常に複雑であり、それを統計的な見方をとることによって何か見えてくるものがあるのではないかと期待しています。

それで今は何をしているの?

今は、待ち行列理論を勉強しているところです。「待ち行列理論の私的総論」を御参照下さい。