M/M/1→M/1待ち行列ネットワークの待ち時間を求めて(3)

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前回のところで私は困ってしまいました。そこで、ちょっと無理をして、下図に示す同じ色の矢印が同じ流量である、と仮定します。

もし、そうであるならばもちろん全体で釣り合いがとれていることになります。しかし、全体で釣り合いがとれているという条件から、上の仮定を導くことは出来ません。つまり充分条件ではあるが必要条件ではありません。それでも上記の仮定を正しいとして式を立てると、以下のようになります。

  • p(k,m+1)\frac{1}{t_{e2}}=p(k,m)\lambda=p(k+1,m)\frac{1}{t_{e1}}

これを以下の2つの式に分けます。

  • p(k,m+1)\frac{1}{t_{e2}}=p(k,m)\lambda・・・・・・(7)
  • p(k,m)\lambda=p(k+1,m)\frac{1}{t_{e1}}・・・・・・(8)

式(7)は「M/M/1→M/1待ち行列ネットワークの待ち時間を求めて(1)」の式(5)

  • \lambda=\frac{u_1}{t_{e1}}=\frac{u_2}{t_{e2}}・・・・・・(5)

を用いて

  • p(k,m+1)\frac{1}{t_{e2}}=p(k,m)\frac{u_2}{t_{e2}}

よって

  • p(k,m+1)=p(k,m)u_2

ここから

  • p(k,m)=p(k,0)u_2^m・・・・・・(9)

同様に式(8)も式(5)を用いて

  • p(k,m)\frac{u_1}{t_{e1}}=p(k+1,m)\frac{1}{t_{e1}}

よって

  • p(k,m)u_1=p(k+1,m)

ここから

  • p(k,m)=p(0,m)u_1^k・・・・・・(10)

ここのp(0,m)に式(9)を用いると

  • p(k,m)=p(0,0)u_1^ku_2^m・・・・・・(11)


最後にp(0,0)を求めるには

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}\Bigsum_{m=0}^{\infty}p(k,m)=1

であることを利用すれば、

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}\Bigsum_{m=0}^{\infty}p(0,0)u_1^ku_2^m=1

よって

  • p(0,0)\Bigsum_{k=0}^{\infty}u_1^k\Bigsum_{m=0}^{\infty}u_2^m=1

よって

  • p(0,0)\left(\frac{1}{1-u_1}\right)\left(\frac{1}{1-u_2}\right)=1

よって

  • p(0,0)=(1-u_1)(1-u_2)

これを式(11)に代入して

  • p(k,m)=(1-u_1)(1-u_2)u_1^ku_2^m・・・・・・(12)

このように式を求めることが出来ましたので、どうも冒頭の仮定(上図で同じ色の矢印は同じ流量を持つ)は正しかったようです。
M/M/1→M/1待ち行列ネットワークのサイクルタイム」に続きます。あるいは「積形式解」へ進む道もあります。