M/M/1→M/1待ち行列ネットワークのサイクルタイム

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M/M/1→M/1待ち行列ネットワークの待ち時間を求めて(3)」で下図のような待ち行列ネットワーク

の状態の発生確率を

と求めるところまでは行いましたが、そこから「積形式解」の話に続けてしまい、本来の目的であった「待ち時間」を求めるのを忘れておりました。ここでは、その待ち時間を導出しようと思ったのですが、それよりサイクルタイムを求めるほうが導出が簡単なのでサイクルタイムを求めることにします。
まずは、このライン内の各ステーションの平均ロット数を求めます。次に、リトルの法則を用いて各ステーションサイクルタイムを求めます。
まず、最初のステーションの平均ロット数をN_1とすると式(1)から

  • N_1=\Bigsum_{k=0}^{\infty}\Bigsum_{m=0}^{\infty}kp(k,m)=(1-u_1)(1-u_2)\Bigsum_{k=0}^{\infty}(ku_1^k)\Bigsum_{m=0}^{\infty}u_2^m
  • =(1-u_1)(1-u_2)\Bigsum_{k=0}^{\infty}(ku_1^k)\frac{1}{1-u_2}=(1-u_1)\Bigsum_{k=0}^{\infty}ku_1^k・・・・・・(2)

ここで

  • S=\Bigsum_{k=0}^{\infty}ku_1^k・・・・・・(3)

と置くと

  • u_1S=\Bigsum_{k=0}^{\infty}ku_1^{k+1}=\Bigsum_{k=1}^{\infty}(k-1)u_1^k・・・・・・(4)

(3)−(4)から

  • (1-u_1)S=0{\times}u_1^0+\Bigsum_{k=1}^{\infty}ku_1^k-\Bigsum_{k=1}^{\infty}(k-1)u_1^k=\Bigsum_{k=1}^{\infty}u_1^k=\frac{u_1}{1-u_1}

よって

  • S=\frac{u_1}{(1-u_1)^2}

よって

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}ku_1^k=\frac{u_1}{(1-u_1)^2・・・・・・(5)

式(5)を式(2)に代入して

  • N_1=\frac{u_1}{1-u_1}・・・・・・(6)

式(6)が最初のステーションWIPに当たります。スループットは、「M/M/1→M/1待ち行列ネットワークの待ち時間を求めて(1)」での考察から

  • \lambda=\frac{u_1}{t_{e1}}=\frac{u_2}{t_{e2}}

なので最初のステーションサイクルタイムCT_1とすると

  • CT_1=\frac{\frac{u_1}{1-u_1}}{\frac{u_1}{t_{e1}}}=\frac{1}{1-u_1}t_{e1}

つまり

  • CT_1=\frac{1}{1-u_1}t_{e1}・・・・・・(7)

になります。2番目のステーションについても同様に考えれば、

  • CT_2=\frac{1}{1-u_2}t_{e2}・・・・・・(8)

となります。よって、このライン全体のサイクルタイムCTは、式(7)+(8)で

  • CT=\frac{1}{1-u_1}t_{e1}+\frac{1}{1-u_2}t_{e2}・・・・・・(9)

となります。なお、ラインの待ち時間CT_qは式(9)から処理時間であるt_{e1}t_{e2}を引いた

  • CT_q=CT-t_{e1}-t_{e2}=\frac{1}{1-u_1}t_{e1}+\frac{1}{1-u_2}t_{e2}-t_{e1}-t_{e2}

になり、よって

  • CT_q=\frac{u_1}{1-u_1}t_{e1}+\frac{u_2}{1-u_2}t_{e2}

となります。