確率的経路選択について

先行エントリ:分岐型待ち行列の解析


分岐型待ち行列の解析」で宿題になっていました

  • 分岐先を確率で決めるとどうして「分岐型待ち行列の解析」での平衡状態の式が式(7)、式(8)のように書くことが出来るか?

について理由を述べたいと思います。「分岐型待ち行列の解析」で考えた待ち行列ネットワークの図をもう一度示します。

  • 図1

今問題にしているのは装置1から1ロットが装置2の前に進む確率と装置1から1ロットが装置3の前に進む確率です。もう少し厳密に言えば、時間tからt+dtの間に装置1から1ロットが装置2の前に進む確率と装置1から1ロットが装置3の前に進む確率です。時間tからt+dtの間に装置1で1ロットの処理が終わる確率は、(式(7)(8)の左辺はp(k+1,m,n)を含んでおり、このことは装置1には最低1ロットが処理中であることに注意すれば、)「M/M/1における待ち時間の式の導出(2)」で考えたのと同様に考えて、

  • p(k+1,m,n)\frac{dt}{t_{e1}}

であることが分かります。装置1で処理完了したロットが装置2に向かう確率がr_{12}ですので、時間tからt+dtの間に装置1から1ロットが装置2の前に進む確率は

  • p(k+1,m,n)\frac{r_{12}dt}{t_{e1}}・・・・・・(12)

となります。一方、時間tからt+dtの間に装置2からロットが出て行く確率は

  • p(k,m+1,n)\frac{dt}{t_{e2}}・・・・・・(13)

ですから、定常状態では式(12)と(13)が等しいことになります。よって

  • p(k+1,m,n)\frac{r_{12}dt}{t_{e1}}=p(k,m+1,n)\frac{dt}{t_{e2}}

この両辺をdtで割れば、

  • p(k+1,m,n)\frac{r_{12}}{t_{e1}}=p(k,m+1,n)\frac{1}{t_{e2}}

となり、式(7)を導くことが出来ました。同様にして式(8)を導くことも出来ます。
このように分岐先を確率で決めることにすると局所平衡方程式を自然な形で書くことが出来るのです。このように、ステーションでロットが処理された後、次にどのステーションに進むかを確率的に選択する方式を、待ち行列ネットワークの世界では確率的経路選択と呼んでいるようです。

もう少し複雑な待ち行列ネットワークの解析(1)」に続きます。