デーメーテール賛歌

今日は、妄想を書きます。


・・・・昔、自分がギリシアの子供だった頃、吟遊詩人にあこがれていた。どうやったらイーリアスオデュッセイアをあんなふうに、そらんじて歌うことが出来るだろう、それが出来たらどんなにすてきだろう、と、その一節を語り聞かせるウタビトを見ながら思っていた。
ある日、そんなウタビトのひとりに(子供にはすごい老人に見えた)に弟子入りさせて欲しい、と言ってしまったことがあった。もとより幼い子供の言うことであり、私には天性の才能がないことは先方にはお見通しだったが。
「まずは、一番簡単な歌を覚えてごらん。これもホメロスが作った歌だ。」と言って、老人が教えてくれたのは、

畏き女神、髪うるわしいデーメーテールを歌い始めよう
かの女神とその娘神なるいとも美しきペルセポネーとを。
さらば、女神よ、この町を護りたまえ、わが歌を導きたまえ。

という短い歌。
結局、子供の私はすぐに別のことに興味を持ち出し、暗唱したホメロスの歌といえば、これっきりになってしまった。