直列のジャクソン・ネットワークでX-Factorが一番大きい構成

先行エントリ:M/M/m待ち行列ののX-Factor


直列のジャクソン・ネットワークでX-Factoerが一番大きい構成はどんな構成になるのでしょうか? この問題を考える時、利用率が大きくなればX-Factoerが大きくなるのはあたりまえなので、利用率を固定してX-Factoerを比較する必要があります。
しかし、ネットワークにはステーションが複数あるので、どのステーション利用率を基準にして考えるか問題になります。しかし各ステーション利用率は連動していますので、どれかのステーション利用率を固定すれば、全てのステーション利用率を固定したことになります。
ここではボトルネック・ステーション利用率u_bステーション利用率を代表させようと思います。またボトルネック・ステーションの処理時間をt_{eb}で、装置台数をm_bで表すことにします。また、任意のステーションjについて、利用率u_jで、処理時間をt_{ej}で、装置台数をm_jで表すことにします。スループット\lambdaとすると、任意のステーションjについて

  • \lambda=\frac{u_jm_j}{t_{ej}

が成り立ちます。当然、ボトルネック・ステーションについても

  • \lambda=\frac{u_bm_b}{t_{eb}

が成り立ちますので

  • \frac{u_jm_j}{t_{ej}}=\frac{u_bm_b}{t_{eb}}
  • u_j=\frac{m_bt_{ej}}{m_jt_{eb}}u_b

となります。


ジャクソン・ネットワークのサイクルタイム(1)」で

  • CT=\Bigsum_{j=1}^N\left(\frac{m_j^{m_j-1}u_j^{m_j}}{m_j!(1-u_j)^2}p_{0j}+1\right)t_{ej}

を導き出しましたが、これを「M/M/m待ち行列ののX-Factor」でのX-Factor(M/M/m,u)を用いて書き直すと

  • CT=\Bigsum_{j=1}^NX-Factor(M/M/m_j,u_j)t_{ej}

となります。ところでボトルネック・ステーション利用率u_bは、このネットワーク内のステーション利用率の中で最大のはずですから、任意のjについて

  • u_j{\le}u_b

になります。「M/M/m待ち行列ののX-Factor」から

  • もし[tex:u_1
    • [tex:X-Factor(M/M/m,u_1)

でしたので

  • もしu_1{\le}u_2ならば
    • X-Factor(M/M/m,u_1){\le}X-Factor(M/M/m,u_2)

になります。よって

  • CT=\Bigsum_{j=1}^NX-Factor(M/M/m_j,u_j)t_{ej}{\le}\Bigsum_{j=1}^NX-Factor(M/M/m_j,u_b)t_{ej}・・・・・・(1)

となります。さらに、「M/M/m待ち行列ののX-Factor」から

  • もし[tex:m_1
    • X-Factor(M/M/m_1,u)>X-Factor(M/M/m_2,u)

でしたので

  • X-Factor(M/M/1,u){\ge}X-Factor(M/M/m,u)
    • (なぜなら1{\le}mなので)

となります。これと式(1)から

  • CT{\le}{\Bigsum_{j=1}^N}X-Factor(M/M/m_j,u_b)t_{ej}{\le}\Bigsum_{j=1}^NX-Factor(M/M/1,u_b)t_{ej}
  • =X-Factor(M/M/1,u_b)\Bigsum_{j=1}^Nt_{ej}

よって

  • CT{\le}X-Factor(M/M/1,u_b){\Bigsum_{j=1}^N}t_{ej}
  • \frac{CT}{\Bigsum_{j=1}^Nt_{ej}}{\le}X-Factor(M/M/1,u_b)

ところで

  • \frac{CT}{\Bigsum_{j=1}^Nt_{ej}}

はこのネットワーク全体のX-FactoerにほかならないのでこれをX-Factor(u_b)で表すと

  • X-Factor(u_b){\le}X-Factor(M/M/1,u_b)
  • X-Factor(u_b){\le}\frac{u_b}{1-u_b}+1=\frac{1}{1-u_b}

ということになります。つまり、直列のジャクソン・ネットワークでボトルネック・ステーション利用率u_bを固定した時のX-Factoerの最大値は

  • \frac{1}{1-u_b}

ということになります。そして、これが最大になるのは、全てのステーションが1台の装置から成り、しかも利用率が等しい、つまり処理時間が等しい場合であることが分かります。
直列のジャクソン・ネットワークのX-Factorの例」と「現実的なワーストケースの式への疑問(1)」に続きます。