現実的なワーストケースの式への疑問(2)

現実的なワーストケースの式への疑問(1)」の続きです。
Factory Physicsで「現実的なワーストケース」の式をどのように導き出しているかということを見ていきます。

 現実的なワーストケース(PWC)がどのように動作するのかを理解するために、ラインを繰返し巡回するパレットにあなたが乗って巡ると想像する思考実験に戻ろう。ステーション(1台装置)がN個で、その平均処理時間がtで、ライン内のジョブ数がw個で一定であるとしよう。よってこのラインのロー・プロセス・タイムはT_0=Ntで、ボトルネック・レートはr_b=1/tである。
 ・・・・・あなたがステーションに着くたびにN個のステーションの中に等しく分散された他のジョブが平均でw-1個あるのを、パレット上での有利な位置から見ることをあなたは予想するだろう。よって、到着時にあなたの前にあるジョブ数の期待値は(w-1)/Nである。あなたがステーションで費やす平均時間は、他のジョブが処理を完了するための時間プラスあなたのジョブを処理するための時間であるから、以下のように書くことが出来る。

      ステーションでの平均時間=他のジョブのための時間+あなたのための時間
          =\frac{w-1}{N}t+t=\left(1+\frac{w-1}{N}\right)t

 あなたの前の(w-1)/N個のジョブが完了するのに平均[(w-1)/N]t時間必要であると仮定することによって、我々は、あなたが到着した時にステーションで処理中のジョブは部分的には終了していたという事実を無視している。指数分布の記憶なし特性のおかげで我々は無視することが可能になる。
 結局、全てのステーションが同等であると仮定しているので、我々は平均サイクルタイムを単純に個々のステーションでの平均時間にステーション数 をかけることによって計算することが出来る。

      CT=N\left(1+\frac{w-1}{N}\right)t=Nt+(w-1)t=T_0+\frac{(w-1)}{r_b}	

Factory Physics 第2版 第7章 基本工場力学 7.3.3 現実的なワーストケースのパフォーマンス」より


現実的なワーストケースの式への疑問(3)」に続きます。