第2章はマルコフ・チェーンとマルコフ過程の説明である。第3章、第4章、第5章、第6章で必要ないくつかの数学的ツールをこの章は供給する。
マルコフ・チェーンは離散時間−離散状態のモデルであるが、これを拡張したマルコフ過程としては連続時間−離散状態、離散時間−連続状態、連続時間−連続状態、連続時間−混合状態のモデルを考えることが出来る。ただし混合状態とは状態が離散部分と連続部分の両方を持つ場合をいう。
この章では、マルコフ・チェーン(離散時間−離散状態)とマルコフ過程(連続時間−離散状態、連続時間−混合状態)の3つのモデルについて説明する。これらは「第3章 トランスファー・ライン」で構築する2装置1有限バッファ・ラインの3種類のモデル(確定的モデル、指数分布的モデル、連続的モデル)にそれぞれ対応し、これらを用いて第3章のモデルが構築される。
マルコフ過程については、まず条件確率の考えからマルコフ・チェーンを導き出す。次にマルコフ・チェーンの定常状態確率分布について考察する。定常状態確率分布が存在し、それが一意であるならばそれは「エルゴード的」である。定常状態確率分布が存在するが一意ではない例として「ギャンブラーの破産の問題」が示される。
マルコフ過程を連続時間に拡張することによって、連続時間−離散状態のマルコフ・チェーンが導出される。このタイプのモデルの応用例として「M/M/1キューの待ち時間の解析」が示される。
最後に、連続時間−混合状態のマルコフ・チェーンを解析する。これは、一番複雑そうに見えるが、全ての偶然性が状態の離散の部分に由来する場合は、その振る舞いはより単純である可能性がある。そのような例として「信頼性の低い装置からの製造余剰」の問題が示される。ここでの結果はのちに拡張されて「第9章 FMSの稼動:装置故障への応答」になる。
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生産システム工学 第1章 導入 の概要へ
Manufacturing Systems Engineering
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