第16章 総体と工数の計画 の概要

長期の範囲に渡って「何を」「いつ」を製造するかという重要な問題を扱うモジュールが総体計画モジュールである。(「総体」は「Aggregate」の訳語として用いた。「総体」は「製品ファミリー」よりも大きな製品のくくりを指している。)非常に多くの重要な決定が総体計画モジュールに依存しているためこのモジュールは製造計画制御階層において中心の位置を占めている。
人員配置の問題は工数計画モジュールによって扱われる。この章は、総体と労働力の計画に伴う諸課題の概要を提示する。これらのモジュールは長期計画を扱うので、精密なデータや詳細なモデルは不可能であるし不必要である。これらのモジュールが作成する計画は時間が進むにつれて調整される。よい総体計画モジュール構築のためのキーは長期計画に焦点を合わせ続けることと、階層内の他のレベルとの一貫性を維持することである。

  1. 全ての状況において正しいような単一の総体計画あるいは工数計画のモジュールはない。
    • 総体と工数の計画は多くの様々な意思決定問題を内部に組み込んでいる。よい総体計画モジュールや工数計画モジュールは、会社が直面する特定の諸課題を扱うように設計されたモジュールである。
  2. 単純であることが理解を促進する。
    • モジュールで用いるモデルを理解可能に保つことは非常に重要である。一般に、これらのモジュールは計画を正式に発行する前に、計画の候補は検査され、組み合わされ、手動で変更される。一連の計画を生成し、他人に説明するために、ユーザは計画での変更に追従してモデルの設定を変更できなければならない。このため、出来るだけ単純な定式化から始めるべきである。
  3. 線形プログラミングはこれらのモジュールに役に立つツールである。
    • これらのモジュールは長期計画は詳細なデータを扱うわけではないのでキャパシティチェックや売上げの制限や在庫バランスを線形制約として表現することが出来る。よって、実際のコストを線形関数で近似しようとする限り、LPソルバー(線形プログラミング求解ツール)はこれらのモジュールに関係した多くの問題を解くのに非常に効果的な手段である。
  4. 頑丈さは正確さよりも重要である。
    • データがどれほど正確であろうとそしてモデルがどれほど洗練されていようと、総体計画あるいは工数計画のモジュールによって生成される計画はけっして正確には実行されない。実際の製造順序は、モデルに取り込めなかった予期せぬ出来事によって影響を受ける。よって、そのような偶発事象に直面したとしても我々がそこそこにうまく工場を稼動することが出来るような計画の頑丈さが求められる。そのためこれらのモジュールのユーザはさまざまなシナリオの結果を吟味しなければならない。


この章はExcelが提供するLPソルバーの使用法と、分析に必要な諸概念について詳しく説明している。


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