伊勢物語

新版 伊勢物語 付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP5))

新版 伊勢物語 付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP5))

伊勢物語は短編集です。そっけない感じがします。とっつきにくいです。
登場人物を整理すると、短編(「段」と言います。例えば「第二十一段」とか)の間の関係が見えて別の物語が浮かび上がるかもしれません。王朝物語の常として恋の話が中心ですが、私が読んだら、妙に会社人生を思わせるような段が気になるのでした。

第九十七段


 昔、堀河の大臣(藤原基経)と申し上げるお方が、いらっしゃった。そのお方の四十の賀が、九条の家でもよおされた日に、中将であった老人(在原業平を暗示)が、


桜花散り交ひ曇れ老いらくの来むといふなる道まがふがに
(桜の花が桜吹雪になって、老いの来るという道を見えなくしておくれ。大臣がいつまでも、お若くいられますために。)


と詠んだ。

というものですが、第六段を見ると、昔、藤原氏に一泡ふかせようとした在原業平が、藤原基経の妹、高子を誘拐した話が出ており、この二人は昔、敵対関係にあったのでした。それが今では権力者になった基経を「よいしょする」歌を詠むような立場になったわけです。
どうも私は恋愛小説が苦手な性質(たち)で、この本を読んでもこんなことが気になるのでした。