第6章 製造の科学 の概要
製造に関わる多くの人々が、MRP、MRP Ⅱ、ERP、JIT、CIM(Computer Aided Manufacturing)、FMS(Flexible Manufacturing System)、TQM(Total Quality Management)、BPR(Business Process reengineering)などの流行を見てきた。それらはしばしば真実の一端を提供する一方で、それが全ての状況に対する唯一の解決策であると主張し、何がどのような時にうまくいくのかについてバランスの取れた見通しをほとんど提供しなかった。
これらには、基礎となる製造の科学が欠けている。真の製造の科学を発展させるために研究者と実務家は力を合わせる必要がある(Factory Physicsの冷静さ)。
しかし、なぜ科学なのか? 科学には以下の3つの特徴があるからである。
- 科学は数量的な関係を提供する。
- 科学は直感を提供する。
- 科学は統一した枠組みを提供し、それによってさまざまな観点の総合を促進する。
システム分析はほとんどすべての製造問題解決のための論理的基礎である。これは以下の特徴を持つ。
- システム的観点
- 相互作用するサブシステムからなるシステムという観点で問題を観察する。
- 手段−目的分析
- 目的を最初に特定し、次にこの目的に対して選択肢を探索し評価する。
- 創造的な案の生成
- 可能な限り広範囲に選択肢を探求する。
- モデリングと最適化
- 目的に関する選択肢を比較するために、ある種の数量化が必要である。これを行うためにモデルを構築し、それを最適化する。
- 繰り返し
- 現実世界は複雑なので、間違いと見落としを発見して、目的、選択肢、モデルを繰り返し改定する。
では、生産システムの目的は何であろうか? 最上位の目的は「長期間にわたって「よい」投資回収率(ROI)を得ること」と設定出来るだろう。しかしそこから派生する下位レベルの多数の目的が存在する。それらの目的の間の相反関係を、トレードオフを数量化する「モデル」を使用することで解決する。モデルの範囲は単純な数量化手続きから洗練された最適化や分析方法までと広い。しかしコスト会計の提供するモデルは、この目的には適さない。会計の目的はお金がどこへ行ったかを告げることであって、新しいお金をどの改善に使うべきかを告げるものではないからである。