第8章 変動の基礎 の概要

変動は全ての製造システムに存在し、工場パフォーマンスに対して大きな影響を持つ。この章では、製造システムにおける変動を特徴づけるための基本的なツールと直感を開発する。直感は、我々の日々の生活の多くの局面で重要な役割をはたす。例えば、自動車の物理の詳細な理解のゆえであるよりもむしろ物理についての我々の直感的な感覚のゆえに、我々は自動車で曲がる時に速度を落とす。一般に我々の直感は、確率変数の平均についてよく働くが、標準偏差の効果についてはあまり働かない傾向がある。標準偏差の効果についての「よい確率的直感」を開発することは工場管理のマネージャが持つべき重要なスキルである。

  • 物事の変動の主要な尺度は変動係数(=標準偏差/平均)である。製造システムに存在する主要な変動は、装置処理時間の変動ステーションへのパーツの到着における変動(ロット到着時間間隔の変動の2つであり、どちらも工程における待ち時間の原因になる。
    • 装置処理時間の変動の原因には、自然変動、先制攻撃的停止による変動、非先制攻撃的停止による変動、品質問題に起因する変動がある。自然変動とは、明確に指摘できない原因からの処理時間の変動である。先制攻撃的停止とは、我々がそれを望もうと望むまいと起こる処理停止で(例えば、処理の途中に起こる)あり、装置故障がその典型的な例である。非先制攻撃的停止は、避けられないが、いつ発生するかについて我々がなんらかの制御手段を持っているような処理停止であり、セットアップがその一例である。
  • 待ち時間はしばしばサイクルタイムの最大の構成要素である。長い待ち時間には、高い利用率と高い変動の2つの要因が寄与している。
  • 複数の変動要因をまとめることによって総変動を弱くすることが出来る。例えば、半製品の状態で在庫を持ち、オーダーに応じてカスタマイズすることによって安全在庫を削減することが出来る。

この章で中心的な役割をはたすのは待ち行列理論、特にKingmanの近似式とその拡張である。また、つなぎの式も重要な式である。この章での考察が、第9章で示される諸法則の前提となる。


第7章 基本工場力学 の概要 に戻る
第9章 変動の悪影響 の概要 へ進む
Factory Physicsの概要へ