第10章 プッシュ製造システムとプル製造システム の概要

「プル」という用語はしばしば「かんばん」の同義語のように使われている。しかし、「プル」と「かんばん」を同一視することはそのコンセプト(プル)をその実装(かんばん)と一緒にしてしまう危険性がある。プッシュ・システムプル・システムの違いは、プッシュ・システムはジョブ(=ロット)のリリース(ラインへの投入)を予めスケジュールするが、プル・システムはジョブ(=ロット)のリリース(ラインへの投入)をシステムの状態に基づいて許可するという点である。プル・システムの主要なメリットの原因は「システム内WIPに上限が設定されている」ということであり、プルするプロセスにあるのではない。プル・システムはWIP上限を確立し、不必要なWIPを生産することを防ぐ。その結果、プル・システムは


WIP上限を確立する最も簡単なメカニズムはCONWIP(固定WIP)である。CONWIPではアウトプット(ラインからジョブが出て行くこと)にリリース(ラインへの投入)を同期させることによりライン内のWIPを一定数に保つ。平均値分析(MVA)はCONWIPラインを分析するための定量的モデルを導出することが出来る。


CONWIPは純粋なプッシュ・システム(例えばMRP)に比べて以下の長所を示す。

  • WIP量は直接観測できるが、プッシュ・システムにおけるリリース・レートは(観測出来ない)キャパシティに関して設定されなければならない。
  • それが同じステーションを得るのに必要な平均WIP数はより少ない。
  • それは制御パラメータの誤差についてより頑丈である。
  • 状況が許すならば、CONWIPはスケジュールに先行した作業を促進する。

一方、CONWIPは純粋かんばんシステムに比べて以下の長所を示す。

  • 個々のステーション毎にカード数の設定をする必要がないので、CONWIPはより単純である。
  • CONWIPは、製品ミックスの変更に適応し易い。
  • WIPは最も遅い装置の前にたまるという自然傾向によって、CONWIPは浮動するボトルネックに適応できる。
  • 工程間のペース合わせがよりゆるいため、作業者へのストレスがより少ない。


登場する法則類


第9章 変動の悪影響 の概要 に戻る
第11章 オペレーション管理における人間的要素 の概要 に進む
Factory Physicsの概要へ