「プル」という用語はしばしば「かんばん」の同義語のように使われている。しかし、「プル」と「かんばん」を同一視することはそのコンセプト(プル)をその実装(かんばん)と一緒にしてしまう危険性がある。プッシュ・システムとプル・システムの違いは、プッシュ・システムはジョブ(=ロット)のリリース(ラインへの投入)を予めスケジュールするが、プル・システムはジョブ(=ロット)のリリース(ラインへの投入)をシステムの状態に基づいて許可するという点である。プル・システムの主要なメリットの原因は「システム内WIPに上限が設定されている」ということであり、プルするプロセスにあるのではない。プル・システムはWIP上限を確立し、不必要なWIPを生産することを防ぐ。その結果、プル・システムは
WIP上限を確立する最も簡単なメカニズムはCONWIP(固定WIP)である。CONWIPではアウトプット(ラインからジョブが出て行くこと)にリリース(ラインへの投入)を同期させることによりライン内のWIPを一定数に保つ。平均値分析(MVA)はCONWIPラインを分析するための定量的モデルを導出することが出来る。
CONWIPは純粋なプッシュ・システム(例えばMRP)に比べて以下の長所を示す。
- WIP量は直接観測できるが、プッシュ・システムにおけるリリース・レートは(観測出来ない)キャパシティに関して設定されなければならない。
- それが同じステーションを得るのに必要な平均WIP数はより少ない。
- それは制御パラメータの誤差についてより頑丈である。
- 状況が許すならば、CONWIPはスケジュールに先行した作業を促進する。
一方、CONWIPは純粋かんばんシステムに比べて以下の長所を示す。
- 個々のステーション毎にカード数の設定をする必要がないので、CONWIPはより単純である。
- CONWIPは、製品ミックスの変更に適応し易い。
- WIPは最も遅い装置の前にたまるという自然傾向によって、CONWIPは浮動するボトルネックに適応できる。
- 工程間のペース合わせがよりゆるいため、作業者へのストレスがより少ない。
登場する法則類
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