QNA読解:2.3 クラスとルート毎のインプット(1)

上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成
QNA読解:2.1 標準インプット」の続きです。
この「2.3 クラスとルート毎のインプット」は、QNAを生産ラインへ応用する際に重要です。ここで「クラス」と「ルート」という2つの言葉が出ていますが、同じ意味と解してよさそうです。「クラス」とは生産ラインにおいては「製品」であり、「ルート」は「ラウティング」です。ここでは「クラス」と「ルート」は1対1、つまり「製品」と「ラウティング」は1対1と仮定しているようです。これは無理のない仮定です。
では、クラスとルート毎の入力の内容を見ていきます。(以下、単に「ルート毎の入力」と記します。)

  • n
    • ノードの数
  • m_j
    • ノードjのサーバの数

ここまでは標準インプットと同じです。


次にルート毎の情報があります。ルートの一般的な構成を下図に示します。

  • r
    • ルートの数
  • n_k
  • \hat\lambda_k
    • クラスkの客(=ジョブ)が外部から到着する際の単位時間あたり到着数
  • c_k^2
  • n_{kj}
  • \tau_{kj}
    • ルートkj番目の工程での処理時間の平均値
  • c_{skj}^2
    • ルートkj番目の工程での処理時間の2乗変動係数


今回のモデルの場合、標準インプットとは異なり、ルートが確定的であることに注意して下さい。つまり、あるステーションで処理されたジョブの次の行先ステーションは一意に決まります。これは生産ラインのモデルとしては標準インプットより適切です。


QNAは以上の入力を標準インプットに変換します。この論文では次に変換の仕方を述べています。変換方法の記述を簡潔にするために以下のような「指示関数」を導入しています。

このために、1Hが集合Hの指示関数であるとしよう。つまりもしx{\in}Hならば1H=1さもなければ1H=0である。

まず、標準インプットにおける

  • \lambda_{0j}
    • ノードjへの外部到着レート

を求めています。これは直感的に分かるように、対象のノードjを最初の工程(訪問ノード)とするような全てのルートについて合計すれば求めることが出来ます。これを式で書くと以下のようになります。

		\lambda_{0j}=\Bigsum_{k=1}^r\hat\lambda_k1\{k:n_{k1}=j\}		(3)

次に

  • q_{ij}
    • ノードiを出た客が次にノードjに行く確率

を求めてみましょう。これはノードiからノードjに行く流量を、ノードiから出る流量全体で割れば求めることが出来ます。ノードiからノードjに行く流量を

  • \lambda_{ij}

で表わすとすると、ある工程がノードiで次の工程がノードjであるような全てのルートと工程についてその流量を合計すると求めることが出来ます。ルートkl番目の工程のノードは上の表記では

  • n_{kl}

なので、その次工程のノードは

  • n_{k,l+1}

になります。ある工程がノードiで次の工程がノードjであるような全てのルートと工程は

  • 1\{(k,l):n_{kl}=i,n_{k,l+1}=j\}

が1であるようなklです。よって、

		\lambda_{ij}=\Bigsum_{k=1}^r\Bigsum_{l=1}^{n_k-1}\hat\lambda_k1\{(k,l):n_{kl}=i,n_{k,l+1}=j\}		(4)

となります。ついでに、ノードiからネットワークの外へ出て行く流量も求めておきましょう。これは同様に考えて

		\lambda_{i0}=\Bigsum_{k=1}^r\hat\lambda_k1\{k:n_{kn_k}=i\}		(5)

となります。よって、ノードiから出る流量全体は

  • \lambda_{i0}+\Bigsum_{k=1}^n\lambda_{ik}

となります。よって

  • q_{ij}

		q_{ij}=\frac{\lambda_{ij}}{\lambda_{i0}+\Bigsum_{k=1}^n\lambda_{ik}}		(6)

となります。


QNA読解:2.3 クラスとルート毎のインプット(2)」に続きます。