QNA読解:2.3 クラスとルート毎のインプット(3)

上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成
QNA読解:2.3 クラスとルート毎のインプット(2)」の続きです。
次に、ノード(=ステーション)での処理時間の平均値

  • \tau_j

と2乗変動係数

  • c_{sj}^2

を求めます。これで標準インプットに必要な変数はそろいます。
まず平均値について考えます。1つのルートが何度も同じノードを訪問する可能性があることを考慮すると、あるノードを訪問するルートと工程の組合せ毎の処理時間の平均値から、このノードでの総平均値が求まりそうです。部分集合における平均値から集合全体の総平均値を求めるには加重平均すればよいので、ノードjでの平均値は以下のように求めることが出来ます。

		\tau_j=\frac{\Bigsum_{k=1}^r\Bigsum_{l=1}^{n_k}\hat\lambda_k\tau_{kl}1\{(k,l):n_{kl}=j\}}{\Bigsum_{k=1}^r\Bigsum_{l=1}^{n_k}\hat\lambda_k1\{(k,l):n_{kl}=j\}}		(7)


次に処理時間の2乗変動係数です。あいにく部分集合における2乗変動係数を加重平均しても集合全体の2乗変動係数にはなりません。加重平均して集合全体の平均になるものは、何らかの意味で平均でなければなりません。ここで、処理時間の2乗の平均値を考えます。これは平均なので、部分集合における処理時間の2乗の平均を加重平均すると集合全体における処理時間の2乗の平均になります。次に、処理時間の2乗の平均値と2乗変動係数の間の関係を求めます。これによって、集合全体における処理時間の2乗変動係数を求めることが出来ます。


E()が確率変数の平均をSTD()が確率変数の標準偏差を表すとします。任意の確率変数Xについて

  • \{STD(X)\}^2=E(X^2)-\{E(X)\}^2

が成り立ちます。ノードjの処理時間は確率変数ですので、これをT_jで表わします。すると

  • \{STD(T_j)\}^2=E(T_j^2)-\{E(T_j)\}^2

になります。よって

  • E(T_j^2)=\{E(T_j)\}^2+\{STD(T_j)\}^2

これを変形すると

  • E(T_j^2)=\{E(T_j)\}^2+\{STD(T_j)\}^2=\{E(T_j)\}^2(1+\{\frac{STD(T_j)}{E(T_j)}\}^2

ここで

  • E(T_j)=\tau_j
  • \frac{STD(T_j)}{E(T_j)}=c_{sj}

なので結局

  • E(T_j^2)=\tau_j(c_{sj}^2+1)

となります。ルートkl番目の工程における処理時間の2乗の平均を

  • E(T_j^2)_{kl}

と表わすと、同様に考えて

  • E(T_j^2)_{kl}=\tau_{kl}(c_{skl}^2+1)

となります。ただし、

  • \tau_{kl}

  • c_{skl}

QNA読解:2.3 クラスとルート毎のインプット(1)で登場した入力データであり、

  • \tau_{kl}
    • ルートkl番目の工程での処理時間の平均値
  • c_{skl}^2
    • ルートkl番目の工程での処理時間の2乗変動係数

です。

  • E(T_j^2)_{kl}

  • E(T_j^2)

はともに平均値なので、

  • E(T_j^2)_{kl}

を加重平均することで

  • E(T_j^2)

を求めることが出来ます。これを書き下すと

		\tau_j^2(c_{sj}^2+1)=\frac{\Bigsum_{k=1}^r\Bigsum_{l=1}^{n_k}\hat\lambda_k\tau_{kl}^2(c_{skl}^2+1)1\{(k,l):n_{kl}=j\}}{\Bigsum_{k=1}^r\Bigsum_{l=1}^{n_k}\hat\lambda_k1\{(k,l):n_{kl}=j\}}	(8)

となります。この式から

  • c_{sj}^2

を求めます。
これでルート毎の入力を標準入力に変換する方法が記述されました。


QNA読解:2.3 クラスとルート毎のインプット(4)」に続きます。