QNA読解:5.1 GI/G/1待ち行列(6)

上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成


QNA読解:5.1 GI/G/1待ち行列(5)」の続きです。
このセクションの最後は、システム内のジョブの数N(待っているジョブと処理中のジョブの両方を含む)の2乗平均と分散を求めています。まず、GI/G/1ではなくM/G/1の場合についてNの2乗平均E(N^2)考えます。
その前にちょっと準備をします。
ある時刻t_0からt_0+tの間の到着数をN(t)で表わすことにします。N(t)は確率的に変動するので確率変数です。Tを別の確率変数とします。するとN(T)もまた確率変数になります。このN(T)の2乗平均E\left(N(T)^2\right)はどう計算されるでしょうか? T確率密度関数p(t)で表わします。すると

  • E\left(N(T)^2\right)=\Bigint{E_t}\left(N(t)^2\right)p(t)dt・・・・(ア)

と表わすことが出来ます。ただしE_t()tを固定しての平均を表わします。次に

  • E_t\left(N(t)^2\right)=Var_t(N(t))+E_t\left(N(t)\right)^2・・・・(イ)

ただしVar_t()tを固定して計算した分散を表わします。式(イ)の右辺の2番目の項はN(t)の意味から考えると

  • E_t\left(N(t)\right)=\lambda{t}・・・・(ウ)

であることが分かります。\lambdaは到着頻度(スループット)です。また、式(イ)の右辺の最初の項は、到着間隔の分布が指数分布なので「ポアソン分布」の式(5)を使うことが出来て

  • Var_t(N(t))=\lambda{t}・・・・(エ)

となります。(ウ)(エ)を(イ)に代入して

  • E_t\left(N(t)^2\right)=\lambda{t}+\lambda^2t^2・・・・(オ)

となります。式(オ)を式(ア)に代入して

  • E\left(N(T)^2\right)=\Bigint(\lambda{t}+\lambda^2t^2)p(t)dt=\lambda{E(T)}+\lambda^2E(T^2)

よって

  • E\left(N(T)^2\right)=\lambda{E(T)}+\lambda^2E(T^2)・・・・(カ)

これで準備が出来ました。
あるジョブが処理を終了する際の待ち行列システム内のジョブNは、そのジョブの待ち時間W(確率変数です)と処理時間v(確率変数です)を足した時間の間に到着したジョブN(W+v)になるはずです。この数の2乗平均からE(N^2)を計算します。(終了時刻のみの平均と時間平均が等しいのか私には疑問が残ります。) すると

  • E(N^2)=E\left(N(W+v)^2\right)

ここで(カ)を用いると

  • E(N^2)=E\left(N(W+v)^2\right)=\lambda{E(W+v)}+\lambda{E((W+v)}^2)
    • =\lambda(EW+Ev)+\lambda^2[E(W^2)+2E(Wv)+E(v^2)]

ここでWvは独立であるので

  • E(Wv)=EWEv

よって

  • E(N^2)=\lambda(EW+Ev)+\lambda^2[E(W^2)+2EWEv+E(v^2)]

さらにここで

  • Ev=\tau=1/\mu

であり

  • \rho=\lambda/\mu

であることを用いると

  • E(N^2)=\lambda{EW}+\rho+\lambda^2E(W^2)+2\lambda{\rho}EW+\lambda^2E(v^2)

さらに

  • E(v^2)=Var(v)+Ev^2=(c_s^2+1)Ev^2

を用いると

  • E(N^2)=\lambda{EW}+\rho+\lambda^2E(W^2)+2\lambda{\rho}EW+\rho^2(c_s^2+1)・・・・(62)

を導き出すことが出来ます。
次にVar(N)を求めます。「QNA読解:5.1 GI/G/1待ち行列(2)」に登場した式(47)

  • EN=\rho+\lambda{EW}・・・・(47)

と式(62)を用いて

  • Var(N)=E(N^2)-EN^2=\lambda{EW}+\rho+\lambda^2E(W^2)+2\lambda\rho{EW}+\rho^2(c_s^2+1)-(\rho+\lambda{EW})^2
    • =\lambda{EW}+\rho+\lambda^2E(W^2)+2\lambda\rho{EW}+\rho^2(c_s^2+1)-\rho^2-2\rho\lambda{EW}-\lambda^2EW^2
    • =\lambda{EW}+\rho+\lambda^2E(W^2)+\rho^2c_s^2-\lambda^2EW^2
    • =\lambda{EW}+\rho+\rho^2c_s^2-\lambda^2Var(W)

よって

  • Var(N)=\lambda{EW}+\rho+\rho^2c_s^2-\lambda^2Var(W)・・・・(63)

式(62)と(63)はGI/G/1についての式ではなくM/G/1についての式であることに注意して下さい。今度はこれをGI/G/1用に補正します。


QNA読解:5.1 GI/G/1待ち行列(7)」に続きます。