Kingmanの近似式の根拠が明らかになるか?(1)
G/G/m待ち行列の平均待ち時間を与える近似式
の根拠を知ることはここ2年、私の懸案事項の一つでありましたが、ようやくネット上でそれに関する有望そうな情報を得ました。逆瀬川浩孝氏による「待ち行列における近似モデル(特集 モデルの複雑さのへのアプローチ)」のpdf版のp.5の終わりからp.6にかけての部分です。その部分を引用します。
、、、のように計算のできるモデルで値を求め、それらの結果から、もっと複雑なモデルの特性量の期待値を予測しようとするデータ解析的なアプローチの仕方がある。・・・・・
一般の複数窓口モデルのうち、到着分布もサービス分布も、その変動係数が1よりも小さい場合には、、、の平均待ち時間の1次結合として近似的に、
- ・・・・(5)
で与えられるようだ、ということがアーラン分布を使ったいくつかの例で確かめられている*1。
ここでとあるのは上でのと同じ意味です。
一方、の平衡解は解析的に求まっており、平均行列長は分布のパラメータと窓口の数との関数で与えられているが階乗を含む面倒な式になっている。これを
・・・・・・
という簡単な式におきかえても、比較的精度よく近似できることが確かめられている。
これは逆瀬川の近似式です。これについては「逆瀬川の近似式の精度」で扱いました。ただしここで登場するのは平均行列長についての式ではなく平均待ち時間についての式です。リトルの法則を用いれば、互いに他の式に変換することが出来ます。
近似式というのは、最終的な結果を出すのが目的ではなく、大雑把な比較のために用いられるのだから、あまり高い精度は要求されないだろう、ということから、この式と(5)式および
- ・・・・(6)
とから、次の近似式が導かれる。
これは(6)式を使った影響で、ほとんどの範囲で過大評価を与えるが、実用的にみて許容範囲にあることが数値的に確かめられている*2。
これでだいたい大筋は明らかになっていますが、今まで私が用いてきた記号を用いて式(1)の根拠付けを行います。
「Kingmanの近似式の根拠が明らかになるか?(2)」に続きます。