M/G/1の定常状態分布の近似式
「M/D/1の定常状態分布の近似式」で近似式を導いた同じ方法を使えば、M/G/1、つまり装置の処理時間分布を一般の分布に拡張した場合の近似式を求めることが出来ます。この近似式が精度よく適用出来る条件を求めることが宿題として残っていますが、私の見込みでは、処理時間の変動係数が
- ・・・・・(1)
の場合は適用出来るように推測します。というのは、これから求める式はM/D/1の時に誤差±2.5%でしたし、M/M/1の時には正確な式になるからです。通常の装置ではは(1)の範囲内に入るでしょうから、これは適用範囲が広い近似式だと思います。では、導出してみましょう。
まず「M/D/1の定常状態分布の近似式」と同じように
- ・・・・・(2)
- ただし
- は定数
- ただし
とします。満たさなければならない条件は
- ・・・・・(3)
- ・・・・・(4)
そして、「待ち行列理論の私的総論」に登場するM/G/1の平均待ち時間の式
- ・・・・・(5)
です。これらを満たすようなとの値をこれから求めます。
式(2)からの時
- ・・・・・(6)
が導かれます。
次に、式(4)ですが、式(3)を考慮すれば、以下のように変形できます。
- ・・・・・(7)
式(7)に(6)を代入して
- ・・・・・(8)
次に、式(5)ですが、まずはリトルの法則を用いて平均待ちジョブ数を求める式に変形します。この場合、WIPが、サイクルタイムが、スループットが
- ・・・・・(9)
にあたるので
式(5)を用いれば
よって
- ・・・・・(10)
一方、の定義から
- ・・・・・(11)
なので、式(10)を考慮すると
となります。ここで式(7)を考慮すると
- ・・・・・(12)
式(12)の左辺は
となりますが、「補足」の式(2)を参照すれば
ここで式(8)を考慮すれば
これを式(12)の左辺に代入すれば
よって
- ・・・・・(13)
よっての時のM/G/1の定常分布の近似式は以下のようになります。
まとめると、M/G/1の定常分布の近似式は
- ・・・・・(3)
- の時
- ・・・・・(14)
となります。
「M/G/1の定常状態累積分布の近似式」に続きます。