「M/G/1の定常状態分布の近似式」で求めた近似式は、累積確率、つまり、システム内に、ジョブが個以下存在する確率
- ・・・・・(1)
を近似する場合に、誤差が蓄積されることはなく、よい近似を生成出来るようです。というのは、「M/D/1の定常状態分布の近似式の精度」で近似式の精度を下のグラフに示しましたが、
このグラフから分かるようにM/D/1の時、近似式の誤差が大きいのはの誤差との誤差の2つだけであり、しかもこの両者は符号が反対で絶対値がほぼ同じなので、の誤差がやの誤差より小さくなるからです。
では、話をM/G/1の場合に戻し、この待ち行列のジョブの累積確率を求めてみましょう。「M/G/1の定常状態分布の近似式」から、の近似式は
- ・・・・・(2)
- の時
- ・・・・・(3)
でした。まず、
ですから、(2)から
- ・・・・・(4)
です。次にの時
なので、(3)と(4)から
よって
- ・・・・・(5)
式(5)はという前提がありましたが、その右辺にを代入する
となって(4)の右辺と一致するので式(5)は0以上の任意のについて近似式として使えることが分かります。
さて、式(5)をM/M/1に適用すると、処理時間は指数分布なので
- ・・・・・(6)
よって、これを式(5)に代入すると
つまり
- ・・・・・(7)
しかし、これはもとの式(3)がM/M/1の時には近似式ではなくて等号が成り立ちますので、(7)も等号が成り立ちます。先に式(3)の右辺に式(6)を代入した時の式を確認しておきます。
- 式(3)の右辺
となってM/M/1の時の正しい状態確率の式になります(「M/M/1における待ち時間の式の導出(2)」の式(9)参照)。よって(3)から導き出された(7)の右辺も近似ではなく正確な式になります。よって、
- ・・・・・(7')
が成り立ちます。
次に、式(5)をM/D/1に適用してみます。処理時間は一定なので
- ・・・・・(8)
よって、これを式(5)に代入すると
つまり
- ・・・・・(9)
これは近似式なので、今度はその精度を知りたくなります。
「M/D/1の定常状態累積分布の近似式の精度」に続きます。