拡散近似(7)
「拡散近似(6)」で得たブラウン運動の定常状態確率の式(53)
- ・・・・・(53)
の意味を調査する前に、定常状態が存在することの証拠のようなものを示します。
このブラウン運動は、平均が
- ・・・・・(49)
標準偏差が
- ・・・・・(50)
であるようなブラウン運動です。ただしは負の値とします。これに似たランダムウォークで、定常状態が得られることをこれから示します。「拡散近似(4)」でのランダムウォークはX軸上を1進むのも−1進むのも1/2の確率で起こりました。今度は、X軸上を1進むのは0.4の確率で、−1進むのは0.6の確率であるとしましょう。つまり
- ・・・・・(54)
で計算します。
すると、「拡散近似(4)」での図4
に当るものが今度は図7
のようになります。ところが、これを見ても定常状態にはなっていません。文字通り拡散して(=拡がって)いっています。
実は、これが定常状態を生み出す秘密は、このランダムウォークの軸の値を0以上に限定する、という決まりを与えることにあります。
では図5での欄より下に現れる確率はどうすればよいでしょうか? これをそのまま消すと、特定の時刻での確率の合計が1にならず、確率として不適切なことになります。そこで確率がの欄より下に現れる場合の特別ルールを作って、それをの欄の確率に足し込むことにします。つまり
- ・・・・・(55)
です。そして(54)はの時のみ適用することにします。すると図8
のようになります。この図のの値の大きいところを見ていくと図9のように
ほぼ一定の分布になっているのが分かります。
このようにランダムウォークのX軸での値を0以上に限定することは、待ち行列の客数が0以上であることに対応しています。の時のみ式(55)を使うのは不公平ではないか、という疑問も出てきますが、元々の微分方程式(51)
- ・・・・・(51)
をの条件で解いたと考えればよいと思います。では(51)は成立していなくてもよいと考えるわけです。
さて、これで式(51)が定常状態を持つことの証拠らしきものをお目にかけることが出来ました。
「拡散近似(8)」に続きます。