拡散近似(5)
「拡散近似(4)」の続きです。
上図のようなランダムウォークのグラフの縦軸と横軸を縮小してブラウン運動のグラフを得ます。しかし、縦軸と横軸を同じスケールで縮小すると、ただののグラフになってしまいます。というのは式(29)
- ・・・・・(29)
から
となり、横軸を1/100に縮小しても、それは縦軸の1/10の縮小にしかならないからです。そこで、上のランダムウォークの縦軸を倍にし、横軸を倍にします。すると下図
のようなブラウン運動のグラフを得ることが出来ます。このブラウン運動をで表すことにします。こうして得られたブラウン運動はもちろん各時刻においての値が確率的に変動します。ですからの値がである確率密度を考えることが出来ます。今度はこれを求めます。これを求めるためにもう一度「拡散近似(4)」で考えたランダムウォークに戻ります。
の値がである確率をで表すことにします。今、であったとします。これはの時にで1/2の確率で進んだ場合との時にで1/2の確率で進んだ場合の両方の場合の結果として考えられます。よって
つまり
- ・・・・・(30)
となります。ここから
- ・・・・・(31)
ここで回数の代わりに時刻を導入します。
- ・・・・・(32)
- ・・・・・(33)
とおいて、あとでにすることでブラウン運動の式を導き出します。
まず(31)に(32)(33)を代入して
-
- ・・・・・(34)
ここで
- ・・・・・(35)
とおけば、式(34)は
- ・・・・・(36)
ここでさらに、
- ・・・・・(37)
- ・・・・・(38)
とおけば
よって
- ・・・・・・(39)
ここでとすると
さらに、(37)と(38)から
なので式(39)から
となります。この式の変数をで書き換えれば
- ・・・・・(40)
式(40)の解は
- ・・・・・(41)
になります(ただしは積分定数)。これは平均、標準偏差の正規分布の式です。つまり「拡散近似(4)」で登場した二項分布が極限において正規分布になった訳です。
式(41)が(40)の解であることは、(41)を代入することで確かめることが出来ます。まず(40)の左辺は
次に(40)の右辺を求めるためにまず
これをさらにで微分して
よって、(40)が成り立つことが分かります。
「拡散近似(6)」に続きます。