「サイバネティックス」という本の「第2章 群と統計力学」(まとめ)

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第2章の論旨を、まとめてみます。第1章「ニュートンの時間とベルグソンの時間」との接続を考えると以下のように並び替えたほうがよいと思います。

  • 第1章「ニュートンの時間とベルグソンの時間」では天文学に代表されるニュートン可逆的な時間と気象学に代表されるベルグソン非可逆的な時間が対比されていた。生命現象を機械論的に扱うことに対する反対意見の背後には機械とは可逆的時間に属するものであり、それは生命現象の非可逆性と相容れない、という考えがある。しかし、それは機械のイメージが古いためであり、新しい機械は生命現象と同じ非可逆的な時間に属するものである、との主張がなされた。
  • エントロピー増大則を統計力学から導き出すためにエルゴード理論を検討した。エルゴード理論を導くためにはルベーグ積分が必要であったこと、と、エルゴード理論が時間経過の変換群に対する物理現象の不変性と密接に関連していることを述べた。これがこの章のタイトル「群と統計力学」の由来である。なお、このエルゴード理論は「第3章 時系列、情報および通信」で統計的通信理論に応用される。
  • 一方、生命現象に解明の光を与えるとの期待からマクスウェルの魔の思考実験を検討した。
    • 第1章では気象学に代表される生命のない現象も生命現象もひっくるめて非可逆的時間に属するもの、としていたのが第2章では
    • ということで区別しようとしているように見えます。(「宇宙の中の飛び地」も参照)
  • ここから「情報とは負のエントロピーである」というテーゼが現れる。そして生命現象解明には情報という視点が必要になることを主張する。そして情報について考察することは機械をより生物に近付ける方法をも明らかにしていくだろう。第3章で展開される予測の理論や、第4章で展開されるフィードバックという方法論、第5章での論理計算、第6章でのパターン認識は、情報という観点から見た生命現象の解明の試みであり、同時に、機械をより生物に近いものにするための方法論と位置づけることが出来る。
  • 生体内で起っていることを記述するモデルの1つとして時系列の統計力学(今の言葉で言えば「確率過程論」)を第3章で論ずることを予告して第2章を終る。