ザ・ゴールにおける在庫と経費

「ザ・ゴール」では、在庫と経費を次のように定義している。

  • 在庫
    • 販売しようとする物を購入するために投資した全てのお金
  • 経費


これらも私にはよく分からない。分からない点をまとめてみると以下のようになる。

  • 1)「在庫」は滞留量なのか流量なのか? つまり、今、そこにある量なのか、単位時間あたりに投資するお金の量なのか?
    • これは、普通「在庫」という言葉からは滞留量をイメージするので、滞留量であると思える。しかし、すると材料の購入費は「在庫」なのかどうかよく分からない。
  • 2)材料購入費は「在庫」なのか「経費」なのか?
    • 材料は工場が生産活動をしている限り常に購入しているものであるから、単位時間あたりの費用でなければ意味がない。たとえば、材料費100万円と表示しても、それは1日あたり100万円支払っているのか、1ヶ月で100万円支払ってるのか、で話が全然異なる。よって材料購入費は流量である。しかし「在庫」は1)で滞留量としたので、これは矛盾する。では、材料購入費は「経費」なのか? ところが「ザ・ゴール」ではこんな言葉が登場する。

・・・・たとえば機械の場合、その減価償却は作業経費だ。それから投資した価値が機械に残っていれば、これを売ることもできるわけだが、それは在庫になる」

「失ったお金はすべて作業経費で、売ることのできる投資はすべて在庫になる」

    • これらからすると、材料は「経費」ではなく「在庫」になるはずだ。すると「在庫」を滞留量と私が解釈したことが間違っているのだろうか? しかし、こんな言葉も登場する。

スループットは、入ってくるお金。在庫は、現在製造プロセスの中に溜まっているお金。作業経費は、スループットを実現するために支払わなければいけないお金。入ってくるお金、中に溜まっているお金、それから出て行くお金、それぞれに指標があるわけですか・・・・」

    • この文章からすると「在庫」は滞留量でなければならない。


今の時点での私の結論としては、単位時間あたりの材料購入費は、スループット、在庫、経費という3つの指標ののどれにもあてはまらない、というものだ。こう考えて次に進もう。


さて、スループットは高ければ高いほうがよく、在庫経費は低ければ低いほうがよい。このことからいかにしてドラム・バッファ・ロープ手法が導き出されるか、頭を整理してみよう。


ドラム・バッファ・ロープ手法を導出する思考過程はこういったところだろうか? こう書いていくと、今のビジネス環境と少しズレているような気がする。現在のビジネス環境では、むしろサイクルタイムを短縮することによって市場変化への追従性を向上させ、それによってビジネスチャンスを逃さない、というところに重点が移っているのではないか? つまり、手法としては同じドラム・バッファ・ロープであっても目的の重点が異なっているような気がする。