「サイバネティックス」という本の「第3章 時系列、情報および通信」(11)
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今回は第3章の中心である
- ・・・・・(15)
の形の時系列における予測の理論の叙述です。しかし、私はこれを充分に理解してはおりません。そこでまず結論らしきものが書かれているところを探してみると
今もしとすると、
(3.83)となる。・・・・この第1項は第2項とは全く独立である。・・・・すなわち(3.83)の右辺第1項は・・・・ガウス分布をもつことが示される。・・・・・ 最良の予測そのものは(3.83)の右辺の最後の項・・・である。
とあります。これについては、いろいろ検討しなければならないことが多いですが、どうやら現在時刻がであり、未来の時刻における時系列の値を予測しようとしているようです。そして(3.83)は
- =平均0の正規分布で変動する項+予測値
の形に分解していることを示しているようです。
それにしても、いろいろな疑問が沸いてきます。まず疑問に思うのはいつのまに
- ・・・・・(25)
になったか、ということです。(25)でと置くと
- ・・・・・(26)
が導かれます。これは式(15)と一致していません。つまり、定積分の範囲の下限が式(15)ではなのに式(26)ではです。両方の式が一致するためには
- の時、・・・・・(27)
が成り立たなければなりません。しかし式(15)を定義した時、そのような制限をに課してはいませんでした。
に式(27)の制限を課してもかまわない理由が第3章には記述されていますが、残念ながら私は理解できません。そこにはフーリエ変換(フーリエ変換は何とか分かります)やコーシー主値という言葉、ヒルベルト変換という言葉が登場します。しかたがないので式(27)の制限を認めて次に進みましょう。
次に疑問になるのは、予測値を結局どのように求めるか、ということです。これについて本の記述を見ていきますと
最良の予測そのものは(3.83)の右辺の最後の項
(3.85)である。ここで
(3.86)とおき、(3.85)の演算子をにほどこして、
(3.87) をみちびけば、(ほぼ(3.81)のようにして)(3.88)を得る。これは最良予測の演算子を周波数の形で表わしたものである。とあります。
さて上の引用の最後の文章に登場する「演算子」とは何でしょうか? これは(3.85)の右辺
- ・・・・・(28)
のことを言っているようです。これは時系列を入力として、別の関数を出力するような形になっており、関数に演算をほどこすという意味で「演算子」と言っているようです。しかもこの演算子は線形になっています。
「線形」というのは、式(28)を
と表わすと、
が成り立つことを言います。
しかし式(28)に登場するとは何でしょうか? これの記述をさかのぼって探してみますと
しかもそのとき、を適当にとれば、
(3.77)となることが示される。ここには、
(3.78)という形式的の性質を持たなければならない。
というのが見つかります。しかしこれを読んでもが何なのか、そしてなぜ(3.77)と(3.78)が成り立つのか私には理解出来ません。