つなぎの式の導出(3)
「つなぎの式の導出(2)」の続きです。
「つなぎの式の導出(2)」でGI/G/1についてのつなぎの式(1)
- ・・・・・(1)
をGI/G/mの場合に拡張したという
- ・・・・・(4)
を導く方法が分からない、と書きました。未だに完全には分かっていないのですが、少しだけ分かったことがあるので、それを書きます。
それは、式(4)は2つの仮定が成り立っている、という推定です。それは
- 仮定A
- の時、GI/G/mからの出発過程の変動係数は以下の式で近似される。
- ・・・・・(18)
- 式(18)でとすると
- となることに注意。
- の時、GI/G/mからの出発過程の変動係数は以下の式で近似される。
- 仮定B
- GI/G/mにおけるの近似式は(1)と同じ形の式になる。ただし(1)におけるをにおきかえる。つまり
- ・・・・・(19)
- GI/G/mにおけるの近似式は(1)と同じ形の式になる。ただし(1)におけるをにおきかえる。つまり
これらの2つの仮定の妥当性はこれから検討していきます。これら2つの仮定を認めてしまうと、式(19)に式(18)を代入して
よって、(4)が導かれます。
次に、仮定A、Bの妥当性はどうかということが問題になります。
まず仮定Aから考えていきます。の時の出発過程というのは、処理時間が連続して続く過程、つまり変動係数がの再生過程を個、重ね合わせたものになります。(図4参照)
ここで重要な仮定をします。仮定Aを支えることになる重要な仮定です。
たぶん、この仮定は厳密には正しくないのでしょう。変動係数以外にももっと高次のモーメントが重ね合わされた系列の変動係数に寄与している可能性があります。
しかし、あとで述べるように近似的にはこの仮定は成り立っているようです。この仮定の正当性は、このあとの結果を見てからの判断ということになります。
上の仮定から重ね合わせて出来た系列の変動係数の2乗をとの関数と考えて
- ・・・・・(20)
と置きます。(20)をテイラー展開して
と表わすことが出来ます。しかし、一般性を失わずにの多項式でテイラー展開して表わすことも出来ます。
- ・・・・・(21)
ポアソン過程を個重ね合わせた系列は、「ポアソン過程の合流と分岐」の合流の個所で述べたように、またポアソン過程になります。これは式(21)に当てはめると、ならば任意のについてが成り立つ、ということを意味します。このことから
- ・・・・・(22)
でなければならないことが言えます。よって(21)は
- ・・・・・(23)
次に、(23)を変形して以下の形にします。
- ・・・・・(24)
ここで、合成された系列をさらに個重ね合わせた系列を考えます。この系列は最初の系列を個重ね合わせたものと考えることも出来ますので、その変動係数をで表わします。この考え方、つまり最初の系列を個重ね合わせたものと考えれば、
- ・・・・・(25)
となります。また、この系列を、変動係数を持つ系列を個重ね合わせたものと考えると
- ・・・・・(26)
となります。式(26)に(24)を代入すると
- ・・・・・(27)
よって(25)と(27)から
- ・・・・・(28)
任意のについて式(28)が成り立つためには
- の時、・・・・・(29)
である必要があります(正直言って、ここは少し自信がありません)。そうすると、式(28)は
となり
- ・・・・・(30)
となります。式(30)が成り立つためには
- ・・・・・(31)
の形である必要があります。ただしは定数です。(29)(31)を(23)に代入すると
- ・・・・・(32)
さらに、
でなければならないので、(32)にを代入して
よって
よって
- ・・・・・(33)
残念ながらこの考察からはの値を定めることが出来ません。ここより先は具体的な系列を想定しての考察となります。
「つなぎの式の導出(4)」に続きます。