DBRの効果を示すモデル(3)

DBRの効果を示すモデル(2)」「閉鎖型ネットワーク内のステーションからの出発過程(3)」の続きです。


DBRの効果を示すモデル(2)」の最後で課題となっていた下図の

  • 図10

閉鎖型ジャクソンネットワークのステーション2からの出発過程の2乗変動係数を、「閉鎖型ネットワーク内のステーションからの出発過程(3)」の式(27)(ここでは式(1)と番号を振り直します。)

  • c_d^2=1-\frac{2}{(n+1)^2}・・・・・(1)

で求めることが出来ました。この結果を用いて、ケース3

  • 図4:ケース3

u利用率)−xX-Factoer)関係の解析を続けます。


プル生産システムのモデル化を目指して(6)」の式(30)(ここでは式(2)と番号を振り直します。)

  • u(w)=\frac{w}{w+N-1}・・・・・(2)

を図10のネットワークに適用するとN=2なので

  • u_1=u_2=\frac{n}{n+1}・・・・・(3)

つまり、装置1と装置2での総ジョブnで装置1と2の利用率u_1=u_2が定まります。ところで

  • t_{e1}=t_{e2}=t_{e4}=0.8t_{e3}=1

と仮定していましたので、u_1=u_2{\le}0.8です。それ以上になると装置3の利用率u_3が1を越えてしまいます。このことと式(29)から許されるnの値は1,2,3,4だけであることが分かります。それぞれの値の時のu_3の値を計算してみると

  • n=1u_3=0.63
  • n=2u_3=0.83
  • n=3u_3=0.94
  • n=4u_3=1.00

となります。u_3=1.00ではステーション3のサイクルタイムCT_3が無限大になってしまいますので、ケース3のux関係を求めるために計算する必要のある場合は、
n=1,2,3の場合のみであることが分かります。これらの時の装置2からの出発過程の2乗変動係数c_{d2}^2を式(1)を用いて計算すると次のようになります。

  • n=1u_3=0.63c_{d2}^2=0.50
  • n=2u_3=0.83c_{d2}^2=0.78
  • n=3u_3=0.94c_{d2}^2=0.88

また、c_{d2}=c_{a3}なのでこれらのデータを用いて、Kingmanの近似式

  • CT_{q3}=\frac{c_{a3}^2+1}{2}\frac{u_3}{1-u_3}t_{e3}

を適用すれば、ステーション3での待ち時間CT_{q3}を求めることが出来ます。これに処理時間t_{e3}を足せば、ステーション3でのサイクルタイムCT_3を計算することが出来ます。次につなぎの式

  • c_{a4}^2=c_{d3}^2=u_3^2c_{e3}^2+(1-u_3^2)c_{a3}^2=u_3^2+(1-u_3^2)c_{a3}^2

を用いてc_{a4}^2を計算し、ふたたびKingmanの近似式

  • CT_{q4}=\frac{c_{a4}^2+1}{2}\frac{u_4}{1-u_4}t_{e4}

を適用して、ステーション4での待ち時間CT_{q4}を求め、ステーション4でのサイクルタイムCT_4を計算することが出来ます。また、「プル生産システムのモデル化を目指して(6)」の式(27)から

  • CT_1+CT_2=(n+1)t_{e1}

これらから、このラインのサイクルタイムCTを計算することが出来ます。ここからX-Factoer xを計算します。これでux関係を求めることが出来ます。(ここでのuは今までと同じくボトルネックでの利用率。この場合はu_3)。その結果を下のグラフに示します。このグラフにはケース1,2の場合も一緒に描いてあります。また、プッシュの場合も一緒に描いてあります。

  • 図11

その一部を拡大したグラフは

  • 図12

となります。これらのグラフから分かるように、やはり、ボトルネックからプルするケース1が一番X-Factoerが小さくなることが判明しました。
これでTOCのDBR(ドラム・バッファ・ロープ)方針の有効性を数学的モデルで確かめることが出来ました。


今までのまとめを「DBRの効果を示すモデル(4)」に示します。