閉鎖型ジャクソンネットワークの積形式解(2)

閉鎖型ジャクソンネットワークの積形式解(1)」の続きです。


同様に

  • \frac{m_Nu_N}{\min(1,m_N)} \frac{m_Nu_N}{\min(2,m_N)}\:\cdots\:\frac{m_Nu_N}{\min(k_N-1,m_N)} \frac{m_Nu_N}{\min(k_N,m_N)}=\frac{1}{p_{0N}}p\{M/M/m_N,u_N\}(k_N)・・・・・(8)


ところで、p(\vec~w)はネットワークの構成とジョブSが定まれば定まる値です。ネットワークの構成とジョブSが定まればu_1も定まります。また、m_1はネットワーク構成情報の一部であるので、これもネットワーク構成が定まれば定まります。よってネットワークの構成とジョブSが定まればp\{M/M/m_1,u_1\}(S)も定まります。よって

  • C_1=\frac{p(\vec~w)}{p\{M/M/m_1,u_1\}(S)}

で定義するC_1もネットワークの構成とジョブSによって定まる数になります。この式を変形すれば、

  • p(\vec~w)=C_1p\{M/M/m_1,u_1\}(S)

となります。これを用いると

  • \frac{\min(S,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(S-1,m_1)}{m_1u_1}\:\cdots\:\frac{\min(k_1+2,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(k_1+1,m_1)}{m_1u_1}{\times}p(\vec~w)
    • = \frac{\min(S,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(S-1,m_1)}{m_1u_1}\:\cdots\:\frac{\min(k_1+2,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(k_1+1,m_1)}{m_1u_1}{\times}C_1p\{M/M/m_1,u_1\}(S)
    • = \frac{\min(S,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(S-1,m_1)}{m_1u_1}\:\cdots\:\frac{\min(k_1+2,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(k_1+1,m_1)}{m_1u_1}
      • {\times}C_1\frac{m_1u_1}{\min(1,m_1)} \frac{m_1u_1}{\min(2,m_1)}\:\cdots\:\frac{m_1u_1}{\min(S-1,m_1)} \frac{m_1u_1}{\min(S,m_1)}p_{01}
    • =C_1\frac{m_1u_1}{\min(2,m_1)}\:\cdots\:\frac{m_1u_1}{\min(k_1-1,m_1)}\frac{m_1u_1}{\min(k_1,m_1)}p_{01}=C_1p\{M/M/m_1,u_1\}(k_1)

よって

  • \frac{\min(S,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(S-1,m_1)}{m_1u_1}\:\cdots\:\frac{\min(k_1+2,m_1)}{m_1u_1}\frac{\min(k_1+1,m_1)}{m_1u_1}{\times}p(\vec~w)=C_1p\{M/M/m_1,u_1\}(k_1)・・・・・(9)


式(9)(7)(8)を式(6)に代入すると

  • p(\vec~k)=C_1p\{M/M/m_1,u_1\}(k_1){\times}\frac{1}{p_{02}p\{M/M/m_2,u_2\}(k){\times}\cdots\times\frac{1}{p_{0N}}p\{M/M/m_N,u_N\}(k_N)}

よって

  • p(\vec~k)=C_1\prod_{i=2}^N\frac{1}{p_{0i}}\Prod_{i=1}^Np\{M/M/m_i,u_i\}(k_i)・・・・・(10)

ここで

  • C=C_1\prod_{i=2}^N\frac{1}{p_{0i}}

とおけば

  • p(\vec~k)=C\prod_{i=1}^Np\{M/M/m_i,u_i\}(k_i)・・・・・(11)

C_1はネットワークの構成とジョブSによって定まる数であり、またp_{0i}

  • p_{0i}=p\{M/M/m_i,u_i\}(0)

の意味ですからm_iu_iによって定まる数なので、Cもネットワークの構成とジョブSによって定まる数となります。


式(11)を見ると閉鎖型ジャクソンネットワークは個々のステーションをM/M/m待ち行列と考えた場合の状態確率を掛け合わせたものに、定数を掛け合わせたものになっています。これが閉鎖型ジャクソンネットワークの積形式解です。ただし、定数Cは1ではありません。定数Cは全ての状態の確率の和が1になるように定められます。
そして、この定数を求めるのが大変そうです。