また、行き詰ってしまいました。
閉鎖型ジャクソンネットワークが積形式解を持つことを示すことが出来たところで、また、行き詰ってしまいました。
2008年1月25日より待ち行列ネットワークへの助走を始めてから、いろいろなことが分かってきましたが、実際の工場運用に役立つ洞察はあったかというと、なかなかそのようなものは無かったように思えます。そのことが私を憂鬱にさせます。
こういう時は今までの経過を振り返ってみましょう。こんな成果を得ています。
- 開放型ジャクソンネットワークが積形式解を持つことを確認した。
- 開放型ケリーネットワークが積形式解を持つことを確認した。
- 「ケリーネットワークの積形式解の存在証明の試み(再挑戦)(1)」以降
- もし、工場へのジョブの投入間隔がポアソン分布であるとみなすことが出来、装置の処理時間が指数分布であるとみなすことが出来れば、工場の挙動はケリーネットワークで表すことが出来ますから、原理的にはこの積形式解を元に解析することが出来ます。
- でも、実際にはそうは見なせないということが気になります。
- 開放型の一般のネットワークを近似するためにWord Whitte教授のQNA(Queueing Network Analyzer)の手法を勉強した。
- 「QNA読解:I.導入とまとめ(1)」以降
- しかし、QNAの全てを理解出来たわけではありません。
- 理解出来た重要なことには以下のことがあります。
- GI/G/m待ち行列のジョブの平均待ち時間の近似式
- つなぎの式
- 「つなぎの式の導出(1)」以降
- この理解の過程で装置が複数台の場合のつなぎの式の正当性には疑問が残ることが分かりました。
- 「つなぎの式の導出(7)」参照
- 閉鎖型ジャクソンネットワークが積形式解を持つことを確認した。
では、ここから工場運用に役立つ洞察として何が引き出せたのでしょうか?
QNAからは、工場全体のスループットとサイクルタイムの関係が(厳密な式では表せないにしても)大体の傾向として把握することが出来、そこから以下のようなグラフを根拠付けることが出来ます。
さらに、変動を削減することで工場のサイクルタイムを減らすことが可能であることを示すことが出来ますが、これはまだ、きっちり述べていませんでした。
閉鎖型ジャクソンネットワークの解析からは、TOCのDBR手法の考え方である
- ボトルネック・ステーションの処理完了のタイミングでジョブを工場に投入する手法
が工場のサイクルタイムを減らすのに有効であることを示す一つの例を提供することが出来ました。(ここから、一般の構成の工場についてプルを導入することの効果を示したくなるのですが、これはうまくいきそうにもありません。)
さらに、ジャクソンネットワークではなく、装置の処理時間が一般の分布の場合にどうなるのか、示すことが出来ません。というのは、QNAを閉鎖型ネットワークに適用してよいのかどうか、私にはまだ分かっていないからです。また、一般のプルについて、どうモデル化したらよいのかも分かりません。
こうやって書いていくと、プルについてもう少し調べたほうがよいかもしれません。