D/M/1待ち行列のジョブのサイクルタイムの変動係数

今度はD/M/1待ち行列におけるジョブサイクルタイム変動係数を求めてみます。


D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(2)」の式(14)(ここでは番号を振り直して式(1)とします)が示すようにジョブ待ち行列システムに到着した時、このシステムにジョブが(処理中のものと待っているものの両方を含めて)k個ある確率は、

になります。そうすると以下「M/M/1待ち行列のジョブのサイクルタイムの変動係数」での検討内容をそのまま適用することが出来ます。まず、装置の処理時間の平均をt_eとします。次に、ジョブが到着した時、システム内にジョブk個ある場合の、この到着したジョブサイクルタイムは確率的に変動するので確率変数CT_kで表します。そうするとその平均は

  • E(CT_k)=(k+1)t_e・・・・・(3)

で表され、その分散は

  • V(CT_k)=(k+1)t_e^2・・・・・(4)

で表されます。
さて、ジョブが到着した時、システム内にジョブk個ある確率は式(1)で与えられるので、全ての場合に渡って平均をとった、ジョブサイクルタイムの平均E(CT)は、式(1)と(3)から

  • E(CT)=\Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)E(CT_k)=\Bigsum_{k=0}^{\infty}(1-b)b^k(k+1)t_e=(1-b)t_e\Bigsum_{k=0}^{\infty}(k+1)b^k
    • =(1-b)t_e\Bigsum_{k=1}^{\infty}kb^{k-1}

ここで「補足」の式(2)を用いれば、

  • (1-b)t_e\Bigsum_{k=1}^{\infty}kb^{k-1}=(1-b)t_e\frac{1}{(1-b)^2}=\frac{t_e}{1-b}

よって

  • E(CT)=\frac{t_e}{1-b}・・・・・(5)


同様にして全ての場合に渡ってのサイクルタイムの分散を求めます。そのためにまず、全ての場合に渡っての2乗平均を求めます。ジョブが到着した時、システム内にジョブk個ある場合のCT_kの2乗平均E(CT_k^2

  • E(CT_k^2)=V(CT_k)+E(CT_k)^2=(k+1)t_e^2+(k+1)^2t_e^2=(k+2)(k+1)t_e^2・・・・・(6)

で求めることが出来ます。この値を全ての場合に渡って平均します。

  • E(CT^2)=\Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)E(CT_k^2)=\Bigsum_{k=0}^{\infty}(1-b)b^k(k+2)(k+1)t_e^2=(1-b)t_e^2\Bigsum_{k=0}^{\infty}(k+2)(k+1)b^k
    • =(1-b)t_e^2\Bigsum_{k=2}^{\infty}k(k-1)b^k-2

ここで「補足」の式(3)を用いれば、

  • (1-b)t_e^2\Bigsum_{k=2}^{\infty}k(k-1)b^k-2=(1-b)t_e^2\frac{2}{(1-b)^3}=\frac{2t_e^2}{(1-b)^2}

よって

  • E(CT^2)=\frac{2t_e^2}{(1-b)^2}・・・・・(7)

サイクルタイムの分散V(CT)は式(5)と(7)から求めることが出来ます。

  • V(CT)=E(CT^2)-E(CT)^2=\frac{2t_e^2}{(1-b)^2}-\frac{t_e^2}{(1-b)^2}=\frac{t_e^2}{(1-b)^2}・・・・・(8)

よってCT標準偏差STD(CT)

  • STD(CT)=\frac{t_e}{1-b}・・・・・(9)

式(5)と(9)から変動係数cは、

  • c=\frac{STD(CT)}{E(CT)}=\frac{t_e}{1-b}\frac{1-b}{t_e}=1

つまり

  • c=1・・・・・(10)

となります。つまり、D/M/1でもM/M/1でもサイクルタイム変動係数は同じ値になるという結果になりました。おそらくGI/M/1ならばサイクルタイム変動係数は1になるのでしょう。