3.3. リトルの法則(2):Quantitative System Performance

3.3. リトルの法則(1)」の続きです。

  • 図3.3 4レベル適用したリトルの法則


 長方形1はたぶん最も微妙である。それは待ち行列含まない単一のリソースへのリトルの法則の適用を示している。この例では、個数はリソースの稼動率に対応しており(どの瞬間についてもゼロ個か1個の要求が存在する。要求が1個存在する時はいつでもリソースは使用される。よって、リソース稼動率は、要求が1個存在する時間の割合に等しく、それはまた存在する平均要求数にも等しい)、スループットはリソースが要求を処理しているレートに対応し、滞在時間は1要求あたりリソースでの平均サービス要求時間に対応する(待ち時間はリトルの法則のこの適用では含まれないことを思い出そう。一旦1個の要求がリソースを捕えると、そのサービス時間の間それはそのリソースに留まる)。リトルの法則のこの適用は稼動率の法則のもう一つの導出を構成する。以前用いた例を繰り返して、リソースはディスクであるとし、そのディスクは40要求/秒で処理していて(X=40)、平均要求は0.0225秒のディスク・サービスを要求する(S=0.0225)としよう。するとリトルの法則(U=XS)は、ディスクの稼動率は、40×0.0225=90%のはずであることを我々に告げている。
 長方形2は今度は待ち行列を含めた同じリソースへのリトルの法則の適用を示している。今度は、個数は待っているか処理中かのいずれかである要求の総数に対応し、スループットは、リソースが要求を処理しているレートのままであり、滞在時間は、要求がリソースで、1訪問あたり費やす平均時間、つまり待ち時間とサービス時間の両方、に対応する。存在する要求数の平均値が4(N=4)でありディスクが40要求/秒(X=40)で処理しているとしよう。リトルの法則(N=XR)は、要求がディスクで費やす平均時間は4/40=0.1秒のはずである、と告げる。今や我々は要求の平均待ち時間を計算出来ること(0.1秒の全体が待ちと処理の両方で費やされ、そのうち、0.0225秒が処理を受けるのに充てられるので、平均待ち時間は0.0775秒になる)と待ち行列内の平均要求数を計算出来ること(平均、全部で4要求が待ちか処理中かのいずれかであり、平均、処理を受けている要求が0.9あるので、待ち行列で処理を待っている平均個数は3.1になる)に注意しよう。
 長方形3は中核サブシステム(端末を除いたシステム)へのリトルの法則の適用を示している。「要求」の定義はこのレベルで変わる。我々はもはや特定のリソースへの訪問には興味なく、むしろシステム・レベルの会話に興味がある。個数は中核サブシステム内の客の数に、つまり、考えていないそれらのユーザの数に対応する。スループットは端末と中核サブシステムの間を流れる会話のレートに対応する。滞在時間は応答時間についての我々の従来の考え、つまり、ユーザが要求を投入した時からユーザの応答が返ってくるまでの期間、に対応する。システム・スループットが1/2会話/秒(X=0.5)であり、平均7.5個の「ready」のユーザがいる(N=7.5)としよう。すると、リトルの法則(N=XR)は、平均応答時間が7.5/0.5=15秒になると告げる。
 最後に、長方形4は、端末を含むシステム全体へのリトルの法則の適用を示している。ここでは、個数は会話するユーザの総数に対応し、スループットは会話が端末とシステムを流れるレートに対応し、滞在時間はシステム滞在時間とユーザの考えている時間の和に対応する。10名のユーザがいるとし、考える平均時間が5秒で平均応答時間が15秒であるとしよう。するとリトルの法則は、システムのスループット\frac{10}{15+5}=0.5会話/秒になると告げる。もし、考える時間をZで示すならば、リトルの法則のこの形をN=X(R+Z)と書くことが出来る。稼動率の法則と同じように、この適用は非常に広く現れるのでそれにそれ自身の名前と表記法を与え、他の量を用いてRを表すことにする。


応答時間の法則の適用例として、システムが64名の会話するユーザを持ち、平均考慮時間が30秒で、システム・スループットが2会話/秒であるとしよう。すると応答時間の法則は、応答時間\frac{64}{2}-30=2秒になると告げる。

 前の諸章で我々はスループットと稼動率は通常、応答時間よりよい精度で予測されると指摘しておいた。いまや、なぜこれがそうなるのか理解出来る位置に我々はいる。我々が前の例のシステムの待ち行列ネットワーク・モデルを構築するものとしよう。ユーザの数(64)と考慮時間(30秒)は、システム内のさまざまなリソースにおけるサービス要求時間とともに、モデルのパラメータであるだろう。スループット応答時間はモデルの出力になるだろう。モデルは1.9会話/秒のスループットを予測するとしよう。その誤差はちょうど5%である。応答時間の法則は待ち行列ネットワーク・モデルによって満足させられなければならないので、予測応答時間における補償する誤差が生じなければならならい。

  • R=\frac{64}{1.9}-30

となる。よってモデルは3.7秒の応答時間で予測し、その誤差は85%である。


3.4. 強制フローの法則(1)」に続きます。