3.5. フロー・バランスの仮定:Quantitative System Performance

3.4. 強制フローの法則(2)」の続きです。

3.5. フロー・バランスの仮定


 しばしば、システムがフロー・バランス性を満足していると仮定することは便利である。つまり到着の数は完了の数に等しく、よって到着レートがスループットに等しい、ということである。

  • フロー・バランスの仮定
    • A=C、よって、\lambda=X

フロー・バランスの仮定は任意の測定期間に渡ってテストすることが出来、測定期間を注意深く選択することによって厳密に満足させることが出来る。
 フロー・バランスの仮定と一緒に用いると、リトルの法則と強制フローの法則は、負荷強度が到着レートによって記述されたシステムのデバイス稼動率を我々が計算することを可能にする。図3.5で、セクション2.4で記述したケーススタディでのVAX-11/780を表現するために使用した待ち行列ネットワーク・モデルと類似したモデルを示した。以下の特徴を持つ3つのデバイス(1つのCPUと2つのディスク)と3つのトランザクション・クラスが存在する。

  • 図3.5 フロー・バランスを用いた稼動率の計算

 このシステム内のデバイスの稼動率を計算するために、各々のトランザクション・クラスについて別々に稼動率の法則を適用し、その結果を合計する。例として、CPUについて考察しよう。もしコンパイル処理トランザクションが480/時間のレートでシステムに到着していてそれぞれがCPUに2.0秒の作業をもたらすならば、コンパイル処理トランザクションによるCPU稼動率は、\frac{480}{3600}{\times}2.0=27%となる。実行とエディティングのトランザクションについての類似の議論によってCPU稼動率はそれぞれ40%と8%になる。よって、総CPU稼動率は75%になる。
 クラスを独立にそれらの相互干渉を考慮することなく解析することが、どうして可能なのだろうか? システムが提供された負荷を処理出来ると仮定すると(つまり、どのデバイスの計算された稼動率が100%より大きくないと仮定すると)、フロー・バランスの仮定が妥当である。よって、システムのスループットはシステムへの到着レートと同じになる。強制フローの法則が、システム内のさまざまなデバイスが与えられた時間内に(「トランザクションの量」で測定された)それ相応の量の作業を行うことを保証している。トランザクションの間の干渉はこれに影響を与えない。むしろ、それはシステム内に滞在するトランザクションの平均個数を増加させ、それはそれに応じた応答時間の増加を(リトルの法則によって)引き起こす。パートIIで我々はこの干渉の程度を数量化する方法を学ぶ。


3.6. まとめ」に続きます。