6.3.3.キャパシティ計画:Quantitative System Performance

6.3.2.修正解析のあるモデル」の続きです。(目次はこちら

6.3.3.キャパシティ計画


 このスタディの目的は、現在の作業負荷量の予測される、四半期3%の増加の、応答時間への影響を評価することであった。システムはAmdahl 470で8MBのメイン・ストレージと16個のチャネルと40台のディスクが付いていた。システムはIBMのMVS OSとIMSデータベース・システムで稼動し、トランザクション処理作業負荷を実行していた。IMSは5つのメッセージ処理領域をサポートしていた。すなわち、それらはIMSによって割当てられスケジュールされたメイン・メモリの領域であり、その各々が1つのユーザ要求を引き受けることが出来る。もし5つより多い要求が未処理であるならば、残りは使用可能な領域を待つキューに入った。
 システム内には多くのさまざまなトランザクション・タイプが存在した。しかし、それらの量はだいたい同じレートで増加しつつあったので、単一クラス・モデルが興味のある性能に関する質問を調査するのに充分であった。(仮にさまざまなトランザクション・タイプが異なるレートで増加しつつあったとしたら、複数クラス・モデルが必要になったことであろう。)システムのモデルは図6.4に示される。それは、システム内の全てのトランザクション・タイプの全体を表す単一トランザクション作業負荷と、5つのメッセージ処理領域だけが使用可能であるという事実を反映したメモリ・キューと、CPUサービスセンターと40台のディスク・サービスセンターを含む。

  • 図6.4 システム・モデル


 このモデルはメモリ・キューを含んでいるので、分離可能ではなく、よってこの章の後で導入されるテクニックによって直接評価することが出来ない。第9章で我々はこのタイプのモデルを評価するための一般的方法について検討する。さしあたり、飽和したメモリ・キューを持つオープン・モデルの解は、客のオープン・クラスを、同時にアクティブなジョブの可能な最大の数と等しい多重プログラミング・レベルを持つクローズド・クラスによって置き換えたクローズド・モデルの解とだいたい等しいことを見ておけば充分である。このモデルは分離可能であるので、簡単に評価出来る。
 モデルの諸パラメータはソフトウェア・モニタが収集した情報から得られた。すなわち、

  • 客の到着レートは測定されたトランザクション到着レートと等しく設定された。
  • CPUでの処理要求時間は以下のように設定された。
    • D_{CPU}=U_{CPU}T/C
    • ただしU_{CPU}は測定されたCPU稼動率であり、Tは測定期間の長さであり、Cはその期間内に完了したトランザクションの数であった。
  • 各々のディスクkでの処理要求時間は以下のように設定された
    • D_k=U_kT/C


 処理要求時間が計算されたやり方により、オーバヘッドと固有の処理要求時間の両方が含まれた。CPUの場合、これはユーザとシステムの両方の処理時間が考慮されたことを意味する。ディスクの場合、これは、シークと回転レイテンシーとデータ転送と、I/Oパス・コンテンションによって失われた任意の時間が含まれたことを意味する。オーバヘッドを考慮するためのこの方法は、オーバヘッドの有用な処理時間に対する比が調査中の提案された修正に対して比較的鈍感であるだろうと予想される場合に非常に役に立つ。この方法の利点は処理要求時間を計算出来る単純な方法であることである。(例えば、ディスク処理時間の各要素の期間を我々は決定する必要がない。) 欠点は、より詳細な情報なしには、オーバヘッドの固有処理時間に対する比の予想される変化をモデル化出来ないことである。このスタディで考慮する修正については、これが目立った欠点であるとは思われなかった。
 諸パラメータを設定した後、応答時間予測を得るためにモデルが評価された。図6.5は4つの異なるメモリサイズについて、すなわち、5つのメッセージ処理領域をサポートするのに適切な既存構成と、6,7、8個のメッセージ処理領域をサポートする拡張された構成について、年と予測応答時間をグラフにしたものである。このスタディに基づいて、メモリを追加することでシステムは最低2年間は適正である、という結論が下された。

6.4. 解法」に続きます。