6.6. まとめ:Quantitative System Performance

6.5. 理論的基礎」の続きです。(目次はこちら

6.6. まとめ

 この章で我々は単一クラス分離可能待ち行列ネットワークの構築と評価について調査した。分離可能モデルは以下の望ましい性質を持っている。

  • 評価の効率:性能予測は分離可能モデルから非常にわずかな計算で得ることが出来る。待ち行列の一般ネットワークは評価するのにずっと多くの計算を必要とするので、それらは実際的なツールではない。
  • 結果の精度:分離可能モデルは大部分のモデル化スタディについて充分正確な性能予測を提供する。我々はこの点を示すために多くのケーススタディを記述した。大部分について、パラメータの値を決めることと作業負荷の成長を予測することに固有の不正確さは分離可能モデルに固有の不正確さより勝る。よって、より正確なモデルを探す動機はほとんどない。
  • コンピュータ・システムとの直接の対応:分離可能モデルの諸パラメータ(サービスセンターや作業負荷タイプ、負荷強度、処理要求時間)はコンピュータ・システムの高レベル特徴と直接対応している。よって、基準モデルを構築する際に測定データからこれらのモデルのパラメータ値を決定することは容易であり、コンピュータ・システムについての予測される変化をモデル内に反映させるために直感的なやり方でパラメータを変更することは比較的簡単である。
  • 一般性:分離可能モデルの構成において要求される制約が個々の分離可能モデル内にコンピュータ・システムの重要な側面を表現することを排除しているような場合、分離可能モデルの集合を用いることが出来る。よって、分離可能モデルはこの本の至るところで徐々に詳細になっていくコンピュータ・システムの側面を含むように我々のモデルを拡張する時に用いる基本ツールである。

 単一クラス分離可能モデルは、第5章の境界モデルと第7章のより詳細な複数クラス・モデルの間の自然な架け橋を形成するので、この章で我々はそれを研究してきた。この点における単一クラス・モデルの重要な性質は

  • 性能を予測する能力:単一クラス・モデルは性能境界ではなく性能見積り値を予測出来るのに充分な詳細を含んでいる。
  • 単純さ:単一クラス・モデルはこれ、定義し、パラメータ値を決定し、評価し、操作するのに最も単純である、が正しいところの最も単純なモデルである。これを踏まえると、それらは、それらが興味のある性能の質問に答えるのに充分詳細である状況における最適のモデルである。
  • 教育的価値第7章で提示するより詳細な複数クラス・モデルは単一クラス・モデルよりかなりわずらわしい表記であるが、実際にはこれらのモデルの非常に単純な拡張である。よって、単一クラス・モデルの理解は、複数クラス・モデルの定義とパラメータ値決定と使用を理解するのに役立つ。

 次の章では複数の区別出来る作業負荷要素を含むシステムに適応するために我々のモデル化能力を拡張する。そのようなシステムを我々は複数クラス分離可能待ち行列ネットワーク・モデルを用いて表現する。