7.1.導入:Quantitative System Performance

6.8. 演習」の続きです。(目次はこちら

7.1.導入


 複数クラス・モデルは単一クラス・モデルと同じように、稼動率やスループット応答時間のような性能尺度の見積を提供する。単一クラス・モデルに対する複数クラス・モデルの優位点は以下である。

  • 出力は個々の客クラスに関して与えられる。例えば、トランザクション処理システムのモデル化において、多くのトランザクション・タイプの各々についての応答時間は、各々のクラスを別々のクラスとして含ませることによって得ることが出来る。単一クラス・モデルにおいては、全てのトランザクション・タイプに渡る平均を表す応答時間についての見積値のみが得られる。
  • CPU制約ジョブとI/O制約ジョブの混合を持つシステムのような、モデル化されるジョブが顕著に異なる動作を示すようなシステムについて、複数クラス・モデルはより正確な結果を提供出来る。これは、若干のシステムは、ジョブが区別出来ないという単一クラスの仮定が受け入れられないので、複数クラス・モデルによってのみ正確にモデル化出来るということを意味する。

単一クラス・モデルと比較しての複数クラス・モデルの欠点は以下である。

  • モデル内に複数の客クラスが存在するので、入力パラメータの複数の組(クラス毎に1組)が必要である。よって、モデル化過程のデータ収集部分はより退屈である。
  • 現状の大部分の測定ツールは、単一クラス・モデルについて可能であるのと同程度の精度で、個々の客クラスに適した入力パラメータを決定するのに充分な情報を提供出来ない。これはパラメータ値決定過程を込み入らせるだけではなく、複数クラス・モデルの潜在的により高い精度を不正確な入力で弱めてしまう可能性があることをも意味する。
  • 複数クラスの解法は単一クラスの解放に比べて実装が若干より困難であり、より多くのマシン・リソースを要求する。

ほとんどの場合、これらの欠点は不正確なモデル化サポート・ソフトウェアに起因しており、よって待ち行列ネットワーク・モデル化がより普及するにつれてより少なくなるはずである。始めの2つの欠点は、モデルを確立するために必要な情報の知識を持って設計された測定ツールによって除去可能である。3番目の欠点は、誰かが待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアを開発している場合にのみ顕著である。市場で入手可能なソフトウェア・パッケージは複数クラス・モデルを評価することが出来る。よってモデル入力を一旦、得てしまえば、複数クラス・モデルは単一クラス・モデルより扱いが困難であるということはない。