7.2.作業負荷の表現:Quantitative System Performance

7.1.導入」の続きです。(目次はこちら

7.2.作業負荷の表現


 第4章で示したように、複数クラス・モデルの入力は大体は単一クラス・モデルの入力と対応している。主要な追加の考慮はスケジューリング規律である。単一クラス・モデル内の客は互いに区別出来ないので、さまざまなサービスセンターでのスケジューリング規律は全く、ディレイかキューイングかのいずれかであるとして特徴づけられる。しかし、複数クラス・モデルでは、客は互いに区別出来、よってスケジューリング規律の選択が重要であり得る。
 (分離可能)複数クラス待ち行列ネットワーク・モデル内に表現可能なスケジューリング規律は多数存在する。しかし実際上は、以下の規律で充分であることが判明している。

  • 先到着先処理(FCFS: fiest-come-first-served):FCFSスケジューリングのもとでは、客は到着した順番に処理される。これは実装するのに最も簡単なスケジューリング規律であるが、解析的にモデル化するのは困難である。これを行うために、当該サービスセンターへの個々の訪問について全ての客クラスが同じ処理要求時間(S_{c,k})を持つという制約を課す必要がある。しかし、異なる客クラスがサービスセンターへの異なる総訪問回数(V_{c,k})を必要とすることは、よってそこで異なる処理要求時間(D_{c,k})を提供することは、可能である。FCFSセンターは多くのクラスについてユーザ・ファイルを含んでいるディスクを表現するのに適している。さまざまなクラスによってデバイスで実行される基本操作が同じであるので、クラス間で平均処理時間がほぼ等しいと仮定することは理にかなっている。個々のクラスの客についての実際のファイル・アクセス回数は、各々のクラスcについてV_[c,k}の適切な値によってモデル内に表現出来る。
  • プロセッサ・シェアリング(PS):プロセッサ・シェアリングはラウンド・ロビン(RR)スケジューリングの理想化である。RRのもとでは、プロセッサのコントロールはキュー内の全てのジョブの間で巡回する。個々のジョブはサービスの量子(quantum)を受け取ったあとキュー内の次のジョブのためにコントロール手放して、キューのおしりに行く。PSのもとでは、量子の長さは実質的にゼロであり、プロセッサのコントロールは全てのジョブの間を迅速に無限に巡回する。その結果、ジョブは同時に処理されるが、処理中のn個のジョブの各々はプロセッサのフルパワーの1/nだけを受け取る。例えば、プロセッサで3MIPS(百万命令/秒)のCPUを共用している3つのジョブは、1MIPSのレートの処理を受け取る。PSは、何らかの形式のRRスケジューリングが実際に用いられているシステム内のCPUスケジューリングをモデル化するのにしばしば適している。
  • 後到着先処理割込再開(LCFS:last-come-first-served preemptive-resume):この規律のもとでは、到着するジョブは処理中のジョブ(それがあれば)にとって代わり自分自身の処理を即座に始める。ジョブ完了が発生した時、最も最近に割込まれたジョブがそれが中断された時点から処理を再開する。LCFSは、高プライオリティのシステム・タスクがディスパッチされる頻度が高くてLCFSが理にかなった近似であるのに充分なくらいであるようなシステム内のCPUをモデル化するのに使用されるだろう。
  • ディレイ:単一クラス・モデルの場合と同様、複数クラスのディレイ・センターは、滞在時間がまったく処理からなる(キューイング待ちがない)ようなデバイスを表現するのに用いられる。

始めの3つの規律は非常に異なっているように見えるが、モデルから得られる性能尺度はどれを用いるかに係わらず同じである。よって、ほとんどの場合、我々はキューイング規律とディレイ規律の間だけを区別し、それ以上細かくは区別しない。

7.3.ケーススタディ」に続きます。