メディチ家の滅亡

この本については、同じ著者の「メディチ家の人びと」以上に読んでいないので、ここに何か書くのもなんだかためらわれます。
メディチ家の人びと」よりは読み易くなっているのですが、それでもなぜ読み通せなかったのか、と言いますと、著者がコシモ3世という、どうにもつまらない人物のことを延々と書き綴っているからです。途中で飽きてしまいました。「メディチ家の人びと」ではコシモ1世が中心で、その宮廷の悪徳の魅力、というのも分からないでもないのですが、コシモ3世というのは本当にどこに魅力があるのか分からないような人物なのです。この次代のジャン・ガストーネのほうは結構おもしろい人物なのですが、著者はこの人物にはあまり記述を割いていません。コシモ3世に対する著者の執着は不可解です。コシモ3世はこの本の15ページ目に早くもに登場し、そこからこの人物の一生が描かれていくのですが、394ページ目になって

 1723年10月31日、コシモはやっとくたばった。
 コシモ逝去の知らせは、フィレンツェの人びとにはまったく感動をもたらさなかった。むしろ、一般的な感情としては安堵の思いだけがひろがった。このくらい人民に愛されなかった君主もめずらしい。パラッツォ・ヴェッキオをはじめ全寺院の鐘が6時間半のあいだ鳴らされた。それは空虚に響いただけだった。
 葬儀はむしろ陽気なものになった。フィレンツェ市民は、生き生きとした気分で、抹香くさい息ぐるしさが消えてゆく予感に浮かれていた。

と、ボロクソに描かれると、かえって「じゃあ、何でそんな人物の一生をこんなに細かく調べ上げたの?」と著者の関心のありどころに興味が湧いてきます。
 メディチ家はコシモ3世の次代ジャン・ガストーネの代で滅亡します。