逆瀬川氏の近似式の論文の和訳(1)
逆瀬川氏の重要な論文
- An approximation formula (近似公式)
がネットに出ていました。
これはGI/G/s待ち行列の平均待ち行列長の近似値を与える、実務上非常に有用な近似式を導いたものです。論文は英語で書かれているので、興味のある人に読んでもらうためにここに翻訳します。
近似公式
逆瀬川浩孝
(1976年7月8日受付)
1.導入
待ち行列について、多くの解析的結果が数名の著者によって発行されてきた。しかし、実際的な観点からは、例えば平均待ち行列長の公式はその豊富な結果にもかかわらず、すぐ手の届くところにはない。これはシステムの解析がWiener-Hopfタイプ積分方程式法に依存しているからである。実際的な用途のために、見積が数表によって、あるいはよりよいことには厳密でなくても単純な公式によって、容易に平均待ち行列長を見積もることが必要である。
最近、Page*1はとと待ち行列の平均待ち時間を用いて平均待ち行列のためのうまくいく公式を提案した。この論文では、この近似法を進め、人が数表を用いずに平均待ち行列長を見積もることが出来る新しい近似公式を導出する。
待ち行列については、解析はの場合よりずっと複雑になり与えられた待ち行列について平均待ち行列長の正確な値を見積もるのは非常に難しい。最近、森*2はの多くのサブクラスについて不等式をまとめたが、それらは平均待ち時間についてのよい特徴を与えてくれるように見える。この論文で我々は平均待ち行列長についての近似公式を提案しそれを解析的にではなく数値的に若干の例について検証する。待ち行列について平均待ち行列長は明示的に表現されるがその計算は簡単ではない。ここで我々はさまざまなの値についての曲線の注意深い観察から単純な公式を導き出す。最後に、我々は単一サーバ待ち行列の場合の類推から近似公式[tex:L_q\approx*3]を推測する。
これら全ての公式は数値的に検査され、実際に役立つことを保障される。
2.近似公式
Page*4が提案した平均待ち時間についての近似公式は以下の通りである。
- (2.1)
ただしとはそれぞれ到着時間間隔とサービス時間の分布関数(d.f.)の変動係数(c.v.)であり、ととはそれぞれとと待ち行列の平均待ち時間である。この公式は到着時間間隔とサービス時間の両方の分布関数の変動係数が1以下であるような任意の待ち行列について非常にうまくいった。もし到着過程がポアソンである、つまり待ち行列、ならば、(2.1)の右辺は以下のようになる。
これはPollaczek KhinchinとKendallによって与えられた公式とちょうど同じであり、つまり、近似公式(2.1)は待ち行列については正確である。
待ち行列については、平均待ち時間は閉形式で見積ることが出来ないので、我々はこの近似ステップをさらに先に進む。表2.1にさまざまな値についてとが計算されている。
表2.1 でのとの差この表から、である広い範囲ではでよく近似されることを見ることが出来る。(2.1)の代わりに(2.2)を用いることが出来る。
- (2.2)
次元の性質のため、我々はの代わりに平均待ち行列長を扱う。さて(2.2)の両辺にをかけて、にを、そしてにを代入する。すると
- (2.3)
となる。(2.3)の第2項は0.3未満であり、極端な簡潔さのために我々はこの項を無視すると、
- (2.4)
となる。これは我々の近似公式であり、この新しい公式は高い値のについてかなりよくを近似する。物事の本質上、近似は待ち行列ではよくないが(2.4)はそれでも実際的には満足のいくものである。
「逆瀬川氏の近似式の論文の和訳(2) 」に続きます。