逆瀬川氏の近似式の論文の和訳(2)
「逆瀬川氏の近似式の論文の和訳(1) 」の続きです。
1968年 Marshall*1は待ち行列の若干のサブクラスについて平均待ち時間に関する若干の不等式を証明した。この論文で用いるその結果は以下のものである。
定義。確率変数の分布関数が増加故障レートを持つならば、つまり任意のについて、である全てのについてが増加関数であるならば、確率変数はIFR性を持つと言われる。
- (2.5)
この補題を用いて、我々はこのサブクラスについて我々の近似公式がよい結果を与えることを証明する。
- (∵)
他方
ただしは全ての待ち行列についてのの上限であり、Kingman*2によって証明された。これらの関係は、は真の値と最大でも1しか違わなくて、実際にはこの差は多くのそのようなシステムについて1/2より少ないことを示している。到着過程がIFR特性を持っているという仮定は多くの場合、理にかなっているので、我々の公式(2.4)は一般性を持つと言うことが出来る。
複数のサーバの待ち行列について、一般に平均待ち行列長を評価する解析的結果が存在しない。まず、我々は待ち行列システムについて平均待ち行列長を基本待ち行列理論を用いて計算する。つまり、
- (2.6)
である。ただしでである。待ち行列の場合の類推で、我々はを、の関数である、ある定数についてので近似する。あるについてのを決定するために我々はをについて計算し、各々のについてをとセットする。次に各々のについて
を計算し、を最小にするようなをとする。つまり、はある意味最小2乗推定量である。次のセクションで、これらの手続きの若干の数値計算結果を示す。これらの結果から、我々はの近似式としてを得ることが出来る。さて、我々は待ち行列についての平均待ち行列長の以下の近似公式を確立する。
- (2.7)
平均待ち行列長についての正確な公式を考慮するならば、この単純さは特筆に価する。この単純な公式は数表なしで容易に計算することが出来る。公式を多くのとの値についてテストすることにより、近似値と真の値の間の差が非常に小さいので、我々は我々の試みが成功したと結論した。
待ち行列について、Lee とLongton*3が平均待ち時間についての以下の近似公式を導出している。
- (2.8)
ただしは待ち行列についての平均待ち時間である。2つの公式(2.7)と(2.8)を組み合わせることにより、単一サーバの場合に類似した待ち行列についての平均待ち行列長についての以下の公式を得る。
- (2.9)
この公式の正当性は次のセクションにて、待ち行列についての場合で数値的に検査される。
最後に、単一サーバ待ち行列の場合の類推から、含まれる分布の変動係数が全て1以下であるような待ち行列について以下の近似式を推測する。
- (2.10)
特にについて、(2.10)は(2.4)に一致する。今のところ、この公式の正しさは検査されていないが、ややのような若干の特別な待ち行列について検査した。しかしこれらの比較の結果はよい結果を示し、それは次のセクションで与えられる。
「逆瀬川氏の近似式の論文の和訳(3)」に続きます。
*1:Marshall, K. T. (1968). Some inequalities in queuing, Operat. Res., 16, 651-665.
*2:Kingman, J.F.C. (1962). On queue in heavy traffic, J. R. Statist. Soc., B 24, 383-392.
*3:Lee, A. M. and Longton, P. . (1959). Queueing process associated with airline passenger check-in, Operat. Res. Quart., 10, 56-71.