20.1. 導入:Quantitative System Performance

19.2.プログラム」の続きです。(目次はこちら

20.1. 導入


 第6章第7章で開発した平均値解析(MVA)アルゴリズムは、キューイングとディレイのタイプのサービスセンターのみを許していた。しかし第8章に記したように、負荷依存サービスセンターを、つまり存在する客の数に応じて処理レート(処理時間の逆数)が変化するセンターを含むモデルを評価するためにこれらのアルゴリズムを拡張することは可能である。これらの拡張はこの附録の主題である。
 時々、コンピュータ・システムの個々の要素は負荷依存センターを用いて最も自然に表現される。例はヘッドの動きを最小化しようとする順序でアクセスが処理されるディスク・デバイスである。そのようなデバイスでキューイングされる要求の数が多ければ多いほど、平均で、各々を満足するのに必要な時間は小さくなる。というのは、スケジューリング方針の効率は待ち行列長とともに増加するからである。
 しかし負荷依存センターの最も重要な利用法は、フロー等価サービスセンター(FESC)を実装することである。FESCの構造と使用法は第8章に詳述されており、多くの応用が第9章と第11章に書かれてあった。
 負荷依存センターに対応するために必要なMVAの修正を検討する際に、我々は注意をクローズド待ち行列ネットワーク(バッチか端末の作業負荷タイプ)と厳密MVAアルゴリズム(単一クラスの場合にはアルゴリズム6.2、複数クラスの場合にはアルゴリズム7.2)に限ろう。始めに、平均値解析の3つの主要ステップを思い出そう。

  • 1.
    • クラスの処理要求時間とそのクラスの客がそのセンターへの到着時に見る平均客数に基づいて、個々のクラスについて個々のセンターでの滞在時間を計算する。
  • 2.
    • 各々のクラスのスループットをそのクラスの客数を全てのセンターでのその滞在時間の和(もしそのクラスが端末タイプならば、プラス考慮時間)で割ったものとして計算する。
  • 3.
    • 各々のセンターでの各々のクラスの待ち行列長を、そのスループットとそのセンターでの滞在時間の積として計算する。

厳密MVAアルゴリズムは、ステップ3の結果を次の繰返しのステップ1で必要な待ち行列長を計算するために用いて、個体数を増加させながらこれらのステップの繰返し適用を含んでいる。
 アルゴリズムの負荷依存バージョンはステップ1と3の改訂、すなわち、負荷依存センターに適用する修正された式、を含んでいる。

  • ステップ1、サービスセンター滞在時間の見積りを考察しよう。負荷独立センターについては、この量は(負荷独立の)処理要求時間とそのセンターへの到着時に見た平均客数を用いて計算される。負荷依存センターについては、処理レートは待ち行列長によって変わるので、ステップ1で用いる滞在時間の式は変化する待ち行列長と対応する処理レートを反映する項によって補足されなければならない。
  • ステップ3、サービスセンター待ち行列長の見積もりを考察しよう。負荷独立センターについては、平均待ち行列長だけがステップ1によって要求されるので、この量だけがステップ3で計算される。負荷依存センターについては、待ち行列長分布、つまり、可能な各々の客個体数がセンターに存在する時間の割合、が必要なので、ステップ3で計算されなければならない。

 負荷依存処理レートはセンターでの客完了のレートをその現在の客個体数の関数として示す。これらのレートは本質的に1訪問あたりであるが、滞在時間の式の結果はセンター費やした総時間(つまり、1訪問あたりの時間かける訪問回数)なので、サービスセンター訪問回数は滞在時間の式の負荷依存バージョンの中では乗数として現れる。よって、負荷依存センターのパラメータを決定するのは負荷独立センターに比べて、単一処理要求時間の代わりに多くの処理レートを与える必要のためだけでなく、サービスセンター訪問回数を提供する必要のためにも、より複雑であるように見える。幸いに後者の複雑さは回避出来る。滞在時間方程式を明示的な訪問回数の情報を取り除くように書き直すことが可能である。この変形はこの附録の最後のセクションに示される。そこでは実装上の考慮が扱われる。
 この本のパートIIの場合と同様に、我々の提示は単一クラスの場合の検討の後に複数クラスの場合の検討が続くように構成されている。実装上の課題は最後のセクションで検討される。


20.2.単一クラス・モデル」に続きます。