クローズド待ち行列ネットワークにおけるノートンの定理(2)

クローズド待ち行列ネットワークにおけるノートンの定理(1)」の続きです。
これは、Sanjay Kumar Boseという方の本「An Introduction to Queueing Systems」の一部を翻訳したものです。
この翻訳した部分http://www.iitg.ac.in/skbose/qbook/ch5_sample.pdfは英語でウェブに公開されているので、日本語に訳しても著作権の侵害に当たらないと判断しました。問題があれば削除しますので、問題を発見された方はご連絡下さい。

  • 図5.14.フロー等価サーバがある等価ネットワーク

 FESのフロー・レート\mu(j)T(j)として計算出来る。ただしこれは、AとBを短絡し、その修正されたネットワーク内をj個のジョブが巡回している時にAとBの間のスループットとしてT(j)を見積もることによって得られる。これはまさにノートンの定理を電気回路に適用する際に「短絡回路」の電流が見積られる仕方に類似しており、そこでは等価電流源の強さがこの短絡回路の電流の値を取るようにされる。これは図5.15により詳細に示されている。図に示すように、FESのフロー・レートは興味の対象の待ち行列Q_iを取り除いて両端A、Bを直接つなぐことによって、つまり待ち行列を短絡させることによって計算される。これはQ_iの処理時間をゼロにすることによっても実行出来る。次にAとBの間のフローはそのネットワークのスループットとなり、修正されたネットワーク内をj個のジョブが巡回している時のT(j)として計算される。

  • 図5.15.ネットワーク内にj個のジョブがある場合のFESのフロー・レートT(j)を得るためのネットワーク

 一般に、絶縁出来るネットワークの部分は1個の待ち行列に制限されず、待ち行列のネットワークであり得る。通常の用語に従って、待ち行列のそのようなネットワークを指定ネットワークと呼び、残りのネットワークを総体と呼ぶ。総体ネットワークは1個のFECに簡約され、指定ネットワークの性能は指定ネットワークのパラメータの変化について調べられる。この階層的分解はネットワークのある大きなクラス、つまりBCMPネットワーク[BCM75]と通常呼ばれるクラス、について正確な結果を生成する。そこでは局所平衡条件が成立する。手順を以下にまとめる。

    • 研究すべき元々のネットワークから待ち行列の指定サブネットワークを選ぶ。残りのネットワークは1個のFESに簡約されるべき総体ネットワークである。
    • 指定ネットワーク内の全ての待ち行列での処理時間をゼロに設定した待ち行列ネットワークを生成する。つまりこれはそれらを短絡する処理である。新しいネットワークでの全ての短絡を通るスループットが同じであるように指定ネットワークは選ばれなければならないことに注意しよう。
    • 上記のネットワークを既知の任意のテクニックを用いて解く。これをネットワーク個体数の可能な全ての値について、すなわち、j=1,...,Mについて解く。さまざまな個体数についての短絡を通るスループットはFES内にジョブがその数あるFESの処理レートに一致する。つまりT(j)である。
    • ネットワーク内を巡回しているジョブの数jの様々な値について、等価FESの処理レートがいまや利用可能である。いまや我々はFESが総体ネットワークを置き換えた指定ネットワークとFESによる等価ネットワークを考える。この等価ネットワーク内の指定ネットワークについての結果は、元々のネットワーク内の結果と同じになる。

 総体は積形式解を持つ待ち行列ネットワークについての正確な結果を生成する。しかし、もし目的が指定ネットワークについての一群のパラメータだけについて解くことであるのであれば、この方法は通常のテクニック(MVAやたたみ込み)を用いるよりも計算量的に高価である。
 総体の本当の利点は実際には非積形式待ち行列ネットワークを解くことのうちに存在する。この場合、通常の戦略は、積形式を持たないコンポーネントを指定ネットワークに置くことである。次に総体のFESが得られ、それは積形式解を持つそれらの待ち行列のみを含んでいる。等価ネットワークは近似非積形式解法かシミュレーションによってのいずれかを用いて解かれる。実際の非積形式ネットワークを解くことは計算量的に非常に高価であるので、等価モデル内で待ち行列の数が縮小されることは計算時間を短縮する。しかしこの場合、総体は近似でしかない。これは、FESはFESは総体の動作を正確にモデル化出来ないからであり、それは総体内の客の位置についての情報が捨てられているからである。しかし、実際に興味のある多くの場合に、この方法によって提供される近似はそれなりの結果を与える。