生産ラインの制御政策(つづき)

さらに生産ラインの最適制御――大野 勝久「2.生産ラインの制御政策」を読んでいきますと、この箇所に興味を持ちました。

(10)にたいしてSpearman and Zazanis [*1]は、単一品種生産ラインに対して「プル方式がMRPより優れており、かんばん方式スループットはCONWIPのスループットを越えない」ことを示している。さらに、Muckstadt and Tayur [*2, *3]は「かんばん方式は同じスループットをCONWIPよりも少ない平均在庫量で達成し、一方CONWIPはかんばん方式よりも変動の少ないスループットを、より少ない最大在庫量で与える」ことを示している。Yang[*4]は、これらの結果が多品種生産ラインに対して成り立つかどうかを明らかにするために、6品種5工程M/M型生産ラインのシミュレーションを実行し、CONWIP、1枚かんばん(引き取りかんばん)、2枚かんばんの各種性能(平均客待ち時間、平均在庫量、平均トリップ数)を生産方式、かんばん枚数、引き取り周期、品種選択則、移動政策を因子とする分散分析を行っている。結論は、「CONWIPは、かんばん方式よりも小さな平均客待ち時間、平均在庫量、平均トリップ数を達成するが、かんばん方式よりも広い在庫スペースを要求すること」である。

(10)と言っているのはCONWIPのことで

  • (10)CONWIP
    • Spearman, Woodruff and Hopp [*5]によりかんばん方式の代替として提案されたプル方式であり、生産ライン内における総WIP(work in process、仕掛品)を常に一定(CONstant)に保持する方式である。したがって、最終製品が顧客に引き取られるごとに先頭工程に生産指示が出され、後は工程順に加工される。

ということでした。CONWIPについては、このブログ内の

も参考にして下さい。

さて上記で述べられている結論で興味をひくものにはこんなものがあります。


最後にYang[*6]の結論として

  • CONWIPは、かんばん方式よりも小さな平均客待ち時間、平均在庫量、平均トリップ数を達成するが、かんばん方式よりも広い在庫スペースを要求する。
  • とありますが、これは理解出来ません。上記のかんばん方式は同じスループットをCONWIPよりも少ない平均在庫量で達成する。と対立する内容になっているのではないでしょうか? 記述の間違いのような気がします。

いずれにせよ、私が今、知りたいと思っているのは上記のようなかんばん方式の特徴です。直感的には

というのは正しいように思えるのですが、私はその根拠を知りたいのです。

*1:M.L. Spearman and M.A. Zazanis, "Push and pull production systems: issues and comparisons" Operations Research, Vol.40, No.3, pp.521-532, 1992.

*2:J.A. Muckstadt and S.R. Tayur, "A comparison pf alternative kanban control mechanisms I", IIE Transaction, Vol.27, No.2, pp.140-150 1995.

*3:J.A. Muckstadt and S.R. Tayur, "A comparison of alternative kanban control mechanisms II", IIE Transaction, Vol.27, No., pp.151-161, 1995.

*4:K.K. Yang, "Managing a flow line with single-kanban, dual-kanban or CONWIP", Production and Operations Management, Vol.9, No.4, pp.349-366, 2000

*5:M.L. Spearman, D.L. Woodruff and W.J. Hopp, "CONWIP:A pull alternative to Kanban", International Journal of Production Research, Vol.28, No.5, pp.879-894, 1990

*6:K.K. Yang, "Managing a flow line with single-kanban, dual-kanban or CONWIP", Production and Operations Management, Vol.9, No.4, pp.349-366, 2000