9.6.1.初期IBM仮想メモリ・システムの単純モデル(1):Quantitative System Performance
「9.6.ケーススタディ」の続きです。(目次はこちら)
9.6.1.初期IBM仮想メモリ・システムの単純モデル
このスタディは待ち行列ネットワーク・モデルを用いたコンピュータ・システム解析の初期の頃から来ている。それが実行された時代では、分離可能待ち行列ネットワークを効率的に評価するための手法(第6章、第7章)やフロー等価と階層モデル化を用いてメモリ・サブシステムを表現するための手法(第8章、第9章)は広くは知られていなかった。これは多くの賢い「近道」を促進した。このスタディは複雑なシステムについての有用な結果がむしろ極端な簡略化の存在のもとであっても得ることが出来ることを示す役割をはたしている。考慮しているシステムは以下の特徴を持つ。
- 少数の会話ユーザ
- CPU集中の作業負荷
- 多数のディスク
- 考慮時間の応答時間に占める割合が小さい(つまり、応答が遅い)
- ページング仮想メモリ・システム
- スラッシングを回避するためマルチプログラミング・レベルは3に制限される。
図9.9はこのスタディで用いられたモデルを示している。これは1客クラスを持つ。個々の客は考慮の期間と(おそらく)メモリ待ちとCPUとI/O処理の交互のバーストを巡回する。マルチプログラミング・レベルが3に制限されておりI/Oデバイスへの可能なパスが多く存在していたので、I/O待ちはほとんどかまったく発生しなかった。これは、I/Oサイブシステムを単一のディレイ・センターとして表現することによってモデルを簡略化することを可能にした。(このスタディの著者らはたぶんモデルを手計算で評価しただろう。多数のディスクを単一のディレイ・センターで表現することは退屈な計算を大量に削減する。待ち行列ネットワーク解析パッケージがあるならば、全てのディスクを明示的に表現することも等しく簡単である。これは、I/O待ちが発生しないという仮定に頼らないので「より安全な」手続きであろう。
メモリ・キューのせいで、モデルは分離可能ではない。しかし、この章の前のほうで説明したFESCの方法がない場合であってさえ、2つの極端な場合についての正確な結果を得ることは可能である。第1の場合は、メモリ利用率が低く、よってほとんどあるいはまったくメモリ待ちが発生しない場合である。これは例えば、応答時間が非常に短くてほとんどのユーザが自分の時間の大部分を考慮に使っている場合に起こるであろう。よって、メモリ内に同時にいるユーザの数は小さく、ユーザがメモリを待つ必要がある確率は無視出来る。この極端な場合メモリ・キューはまったく無視することが出来、分離可能モデルをもたらす。
もう一つの極端はメモリがほぼ100%利用されていて、システムのマルチプログラミング・レベルがその最大値にずっと留まっている場合である。これは実際に、考慮中のシステムに当てはまる場合である。この解析上幸運な状況はモデルを以下のように評価することを可能にした。
- 図9.9のモデル全体から、中核サブシステム(CPUを表すキューイング・センターとI/Oサブシステムを表すディレイ・センター)を取り出す。
- この中核サブシステム・モデルを適切な処理要求時間と、最大マルチプログラミング・レベル(この場合、3)に等しい固定の個体数で評価する。スループット、を求める。
- 応答時間の法則を適用する。(とは提供されなければならない。)
今考慮しているシステムについて、中核サブシステム・モデルの評価はスループット0.395会話/秒を与えた。測定から、会話ユーザの数は10であり、それらの平均考慮時間は4秒であった。応答時間の法則を適用すると
- 秒
測定された応答時間は21.0秒であった。
「9.6.1.初期IBM仮想メモリ・システムの単純モデル(2)」に続きます。