9.6.2.3.モデルの使用法:Quantitative System Performance

9.6.2.2.待ち行列ネットワーク・モデル」の続きです。(目次はこちら

9.6.2.3.モデルの使用法


 このセクションではモデルの使用法を少し詳しく示す。表9.7はベンチマークで測定された若干の特性を示す。

  • 平均会話
    • 0.74 CPU秒
  • 158 ページ・フォールト
  • 12.4 ファイルI/O動作
  • バッチ・ジョブ
    • 330 CPU秒
    • 101386 ページ・フォールト
    • 918 ファイルI/O動作


 表9.8はベンチマークの間に測定されたページング動作に関係する若干のシステム・パラメータを示す。

  • 63.4 ページ・フォールト/秒
  • 55.8 ページ転送/秒
  • 15.9 ページング転送(物理I/O)/秒
  • 表9.8 ページング動作測定値


 デバイス特性の知識と、1スワップあたりと1ファイル操作あたりに転送される平均バイト数と、表9.8から明らかなページI/Oクラスタリング・ファクタ基づいて、表9.9に示すようにI/O処理時間を計算する。

  • 0.150 秒/双方向(inとout)スワップ
  • 0.037 秒/ファイルI/O
  • 0.039 秒/ページング転送
  • 表9.9 I/O操作処理時間


 まず会話ユーザの処理要求時間を計算する。CPU処理要求時間は0.74秒である。ファイルI/Oによるディスク処理要求時間は12.4×0.037=0.46秒である。表9.8から、ページ・フォールトのページング転送に対する割合は63.4/15.9=3.99である。よって平均会話は158/3.99=39.6回のページング転送を引き起こし、39.6×0.039=1.54秒のディスク処理要求時間をもたらす。ベンチマークの際、会話考慮時間はゼロに設定された。(スタディ対象のシステムは応答時間が極端に長いので、ユーザはしばしば予めタイプしていた。)
 よって常に7個の準備完了会話ユーザと6個のアクティブ会話ユーザが存在した。我々はスワッピング近似の第3の構成要素を用いる。:個々の会話は1+0.74/1=1.74回のスワップ(量子長は1秒であった)を要求し、よってスワッピングによる会話ディスク処理要求時間は1.74×0.150=0.26秒である。よって総ディスク処理要求時間は0.46+1.56+0.26=2.26秒である。
 次にバッチ・ジョブを考察しよう。CPU処理要求時間は330秒である。ファイルI/Oによるディスク処理要求時間は918×0.037=34秒である。個々のバッチ・ジョブは101386/3.99=25410回のページング転送を引き起こし、25410×0.039=991秒の処理要求時間をもたらす。バッチ・ジョブはスワップしないので、その総ディスク要求時間は34+991=1025秒である。
 常に7個の準備完了会話ユーザと6個のアクティブ会話ユーザが存在するので、我々は近道をすることが出来、低レベル・モデルを1回だけ、1個のバッチ・ジョブと6個の会話ユーザの個体数について解析する。会話応答時間以外の全ての興味のあるシステム能力尺度はこの解析の結果から直接得ることが出来る。会話応答時間は先のケーススタディでのように、N=7Z=0、そしてXを評価から得られたスループットに等しいとして応答時間の法則を適用することによって計算される。表9.10は観測された性能尺度と予測性能尺度の両方を示す。

  • 表9.10 元々のシステム


 次に、会話作業負荷を除去し、バッチ・ジョブを単独で走らせることの効果を調査する。スワッピング率はゼロになる。キャッシュは8個のプロセスの間ではなく、VMSとバッチ・ジョブによって共用される。それは会話ユーザによって明け渡されたスペースを占有するために拡張され、サイズは150ページから450ページに3倍に増加する。共用ページ・キャッシュの効率についての我々の線形近似によれば、ページ・フォールトのページング転送に対する比は3.99×3×8/2=47.9になると見積もられる。よって我々はページングによるバッチ・ジョブのディスク処理要求時間は101386/47.9×0.039=82.5秒であり、その総ディスク処理要求時間は34+82.5=116.5秒になると計算する。1個のバッチ・ジョブで低レベル・モデルを1回評価する。表9.11は観測された性能尺度と予測された性能尺度の両方を示す。

  • 表9.11 バッチのみ


 最後に、メモリのサイズを2倍にすることの元々の作業負荷への影響を調査する。もう一度、スワッピング・レートはゼロにする。7つの会話ユーザ全部はメモリ滞在になるので、ページ・キャッシュは8個ではなく9個のアクティブ・プロセスで共用されることになる。キャッシュのサイズは150ページから1125ページに、7.5倍に増加する。共用ページ・キャッスの効率の線形近似によれば、ページ・フォールトのページング転送に対する比は3.99×7.5×9/8=33.7になると見積られる。ページングによる会話ディスク処理要求時間は158/33.7×0.039=0.183秒であり、総会話ディスク処理要求時間は0.46+0.183=0.643秒になる。ページングによるバッチ・ディスク処理要求時間は101386/33.7×0.039=117秒になり、総バッチ・ディスク処理要求時間は34+117=151秒になる。1個のバッチ・ジョブと7個の会話客で低レベル・モデルを単に評価することが出来る。表9.12は観測された性能と予測された性能の両方を示す。

  • 表9.12 メモリ追加


 表9.10〜9.12に示す予測された性能尺度は役立つのに充分な程度正確である。我々がシステム修正の大きさや、共用ページ・キャッシュの効率についての線形近似の荒削りであることと、ページングとスワッピングのCPUオーバヘッドへの影響への考慮をしていないことを考慮すれば、この不一致は穏当である。


9.7.まとめ」に続きます。